雑食音楽遍歴

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Orbital『The Altogether』(2001)|知的テクノの極み

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出典:YouTube

2001年前後のエレクトロニック・ミュージック界は、90年代ラヴ・カルチャーの終焉とともに新たなポストレイヴの時代へと移り変わりつつありました。

そんな中、UKテクノ界を代表する兄弟ユニット、Orbitalが送り出した『The Altogether』は、その時代背景を色濃く映す作品です。

これまでのコンセプト性と比肩するようなストーリー性こそ希薄ですが、逆に「パーティーで聴けるエナジーと実験性の混在」を標榜し、自らの境界を曖昧にする挑戦的なアルバムとなりました。 

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アーティストについて

Orbital(オービタル)は、イギリス・ケント州出身の兄弟ユニット、Phil Hartnoll(フィル・ハートノル)とPaul Hartnoll(ポール・ハートノル)によって1989年に結成されました。

エレクトロニック・ダンス・ミュージックの草分け的存在であり、クラシックなテクノからアンビエントブレイクビーツまで幅広くカバー。ライブではシンセサイザーやドラムマシンを駆使し、即興性の高いパフォーマンスでも知られています。

彼らの音楽はその時代のダンス・ミュージックの枠を超え、多くのファンに愛されています。

アルバムの特徴・個性

『The Altogether』は、Orbital作品の中でも特にバラエティ豊かなジャンルミックスが際立っています。ハードなブレイクビーツからポップ寄りのボーカルトラック、アンビエントな空間音楽、コミカルなサンプリングまで、全曲が異なる表情を見せながらも、統一感あるサウンドデザインでまとめ上げられています。

プロダクションはクリアで力強く、低音の迫力と中高域の抜けの良さが両立。序盤から中盤にかけて高揚感を積み上げ、後半に向かって深みのあるサウンドへとシフトしていく構造が特徴的です。

『The Altogether』全曲レビュー

1. Tension

  • ジャンル:テクノ・ブレイクビーツ

  • 特徴:強烈なドラムブレイクと鋭いシンセリフが絡み合うオープニングナンバー。インダストリアルな質感を帯びつつも、刻むリズムがダンサブルで、ライブでも盛り上がり必至のトラック。

2. Funny Break (One Is Enough)

  • ジャンル:トライバル・テクノ/ワールド・エレクトロ

  • 特徴:Naomi Bedfordによるボーカルを含めた構成で、豊潤なパーカッションとメロディの共演が心地よい。反復するベースラインと細やかなパーカッションが推進力を生む楽曲。中盤で挿入される浮遊感のあるシンセパートが、硬質なビートと対照を成し、奥行きのある展開となっている。

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3. Oi!

  • ジャンル:エレクトロ・ニューウェイブ

  • 特徴:Ian Duryのサックスをサンプリングし、80年代ニューウェイヴのモードを引用した作品。コミカルなボイスサンプルと跳ねるようなビートが印象的な異色曲。クラブというよりはパーティ感覚の遊び心が前面に出ており、アルバムのバランスを軽妙に崩している。

4. Pay Per View

  • ジャンル:ミニマル・テクノ

  • 特徴:映像作品のサウンドトラックのような構成。緊張感あるコード進行と控えめなビートが静かに高揚を誘う。背景に潜む効果音が、都市の夜を彷彿とさせる。

5. Tootled

  • ジャンル:ブレイクビーツ・エレクトロ

  • 特徴:Toolの「Sober」を引用したギターリフをメインに配置し、重いブレイクビーツにまみれた構成。奇妙なシンセメロディと断片的なサンプリングが織りなす、小品的なインタールード。全体の流れの中で一息つかせるような配置ながら、不思議な余韻を残す。

6. Last Thing

  • ジャンル:エレクトロニカ

  • 特徴:疾走感のある4つ打ちと重厚なベースが主体。展開の中でミニマルなフレーズが少しずつ変化し、終盤に向けて音の層が厚くなっていく構造が秀逸。Orbitalらしい“隙間のあるダンス”表現を体現している

7. Doctor?

  • ジャンル:クラブ・オルガニック

  • 特徴:BBCの『Doctor Who』テーマを大胆にリミックス。ストリングス的メロディを電子音で再構築した一風変わった曲。歴史的フレーズを引用しつつ、フリッカーしたビートと電子響きの中で現代化している点が印象的。

8. Shadows

  • ジャンル:ダーク・アンビエント

  • 特徴:低音の響きと空間的エコーが印象的な、深く沈み込むようなサウンド。スローテンポながら緊張感を持続させる構成。深夜のTVドラマや映画の挿入曲で使えるようなシネマティックさを含んでいる。

9. Waving Not Drowning

  • ジャンル:フォーキー・エレクトロ

  • 特徴:アコギと電子音が交錯し、まるでサイケデリックフォークのような幻想的な曲調。柔らかなシンセパッドとリズムレスな展開が、穏やかな没入感を生む。曲名通り、浮かび上がるような感覚が漂う。

10. Illuminate

  • ジャンル:ポップ・ソング/エレクトロバラード

  • 特徴:David Gray(Phil Hartnollの義兄)が参加したバラードで、しっとりとした歌メロが展開される典型的なポップソング。ポップな歌メロとエレクトロニックな伴奏の融合が心地よく、シングルカットにもふさわしい完成度を誇る。

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11. Meltdown

  • ジャンル:ジャングル/アグレッシブブレイクビーツ
  • 特徴:重厚なキックと金属的なパーカッションで始まり、徐々にテンションを高めていくクロージングトラック。終盤のカオティックな展開がアルバム全体を強く締めくくる。

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こんな人におすすめ!

  • 90年代テクノ以降のUKエレクトロ・ベテランサウンドを楽しみたい人

  • クラブ用のダンスミュージックと実験音響の融合に興味がある人

  • Orbitalライブセットを自宅で再現したいファン

  • 異ジャンル引用(TVテーマ、ロック、フォークなど)に抵抗のないリスナー

  • メロディよりグルーヴと音空間への陶酔を重視する人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

  1. Underworld『Second Toughest in the Infants』

    クラブフロア向けダンスビートとアンビエント的余白、シネマティックな展開を兼ね備えた傑作。主観とドライな機械性のせめぎ合いを体感できる名盤。

  2. The Chemical Brothers『Dig Your Own Hole』

    ヘヴィでエッジ―なビート構築と、メロウな電子音の融合が特徴的なアルバム。構築と開放のバランスに優れた作品。

  3. Aphex TwinRichard D. James Album』

    ハードブレイクビーツ、実験音響、ポップ構成の混合により、“アーティスト自身のパーティー”を音にしたような個性作。Orbitalが『The Altogether』で向かう“サンプラー実験”のロジックを共有している。

  4. Autechre『Tri Repetae』

    緻密に計算されたリズムと暗黒ミニマルなテクスチャーが特徴。知的ダンストラックを好むリスナーにとって重要な作品。

  5. Leftfield『Leftism』

    ダビーな低音、メロウなヴォーカル、複数の音楽的シーンの交差点を再現した大作。Orbital同様、サンプリングとゲストボーカル、生演奏の融合を推し進めたエレクトロ・ダンスの名盤。

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The Alltogether

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  • オービタル
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まとめ

『The Altogether』は、Orbitalのキャリアの中でも、特に実験的かつ“抜け感”のある作品です。あえて無秩序に見える構成と引用の数々から、「遊び」と「実験」を前面に押し出した姿勢が感じられます。攻めのビートが混在しながらも、所々に挿入されたメロディや余韻が計算されており、リスナーに予測不能な旅を提供しています。

音の冒険とクラブの鼓動を同時に味わいたいリスナーには、クセになる魅力を与える一枚です。