出典:YouTube
Medeski Martin & Wood(以下MMW)は、ニューヨークを拠点に活動する前衛的なジャズ・トリオです。90年代初頭から活動をスタートし、ジャズの枠にとらわれない自由なアプローチで数々のアルバムをリリースしてきました。ピアノやオルガンを駆使するJohn Medeski、ダイナミックかつ変幻自在なドラムを叩くBilly Martin、骨太なグルーヴで支えるベースのChris Wood。この3人が織りなすサウンドは、ジャズでありながらロック、ファンク、ヒップホップ、さらには電子音楽までを横断する独自のものです。
2002年に発表された『Uninvisible』は、そんなMMWの中でも特にクロスオーバー色が濃い作品。オルタナティヴなジャズの在り方を提示すると同時に、ヒップホップやエレクトロを吸収した実験精神あふれる内容となっています。
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アーティストについて
Medeski Martin & Woodは1991年に結成され、ニューヨークのクラブシーンから台頭しました。初期はアコースティック寄りのジャズ・トリオとして活動していましたが、やがてエレクトリック・キーボードやサンプラーを導入し、よりジャンルレスな音楽を展開していきます。
彼らの音楽は、伝統的なジャズのアプローチを尊重しつつも、グルーヴを重視する点が大きな特徴です。そのため、クラブミュージックやジャムバンドのリスナーからも支持を集めています。『Uninvisible』は彼らの円熟期に制作されたアルバムであり、ジャズのリスナーだけでなく、幅広い音楽ファンを惹きつける作品です。
アルバムの特徴・個性
『Uninvisible』の最大の特徴は、ジャンルをまたぐ多彩さです。ジャズ・ファンクをベースにしながら、ヒップホップのビート、ダブ的な音響処理、そして実験的なアンサンブルが随所にちりばめられています。
MMWはこの作品で「ジャズ=即興演奏」という概念を保ちつつ、クラブ的なグルーヴ感を打ち出しました。即興性と構築性のバランスが絶妙で、ライブ感にあふれながらもスタジオ作品としての完成度が高いのが特徴です。リスナーは1曲ごとに新しいサウンドの景色を体験でき、聴くたびに新しい発見があるアルバムです。
『Uninvisible』全曲レビュー
1. Uninvisible
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ジャンル:アシッド・ジャズ/ファンク
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特徴:オープニングを飾る表題曲。重低音のベースとヘヴィなドラムがヒップホップ的な質感を作り出し、オルガンが浮遊感を添える。MCをフィーチャーしたラップが加わることで、ジャズとヒップホップの見事な融合を体現している。
2. I Wanna Ride You
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ジャンル:ファンク/サイケデリック・ジャム
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特徴:タイトルの通り肉体的な熱気を持ったトラック。ベースのうねりとドラムのシャッフルが官能的なリズムを作り出し、メデスキのキーボードが自在に飛び回る。ライブで聴きたい高揚感に満ちている。
3. Your Name is Snake Anthony
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ジャンル:エレクトロ・ジャズ/アブストラクト・ヒップホップ
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特徴:不穏なベースラインと奇妙なエフェクトが印象的。蛇のようにうねるフレーズが、異様な緊張感を演出。実験的でありながら中毒性の高い1曲。
4. Pappy Check
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ジャンル:ハード・ファンク
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特徴:スクラッチとビートが前面に出ており、ヒップホップ的なアプローチが強い。そこにジャズの即興性が絡み合い、MMWらしいクロスオーバー感覚が際立つ。
5. Take Me Nowhere
6. Retirement Song
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ジャンル:フォーク・ジャズ
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特徴:軽快でユーモラスな雰囲気を持つ楽曲。跳ねるようなリズムと明るいオルガンの音色が心を解きほぐし、肩の力を抜いて楽しめる1曲。
7. Ten Dollar High
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ジャンル:ジャズ・ファンク/グルーヴ・インストゥルメンタル
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特徴:高揚感に満ちたリズムと、スピード感のあるベースラインが特徴。タイトルが示すように、少しハイになったような浮遊感と勢いを持っている。
8. Where Have You Been?
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ジャンル:クラブ・ジャズ
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特徴:落ち着いたテンポで展開する楽曲。内省的でメロディアスな構成となっており、アルバムの中で一息つかせるようなポジションを担っている。
9. Reprise
10. Nocturnal Transmission
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ジャンル:スペース・ジャズ
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特徴:夜の静寂を思わせるトラック。ミニマルに音が積み重なり、深い没入感をもたらす。瞑想的な時間を演出する重要な曲。
11. Smoke
12. First Time Long Time
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ジャンル:フュージョン・ジャズ
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特徴:親密で温かみのある演奏が展開される。クラブでの熱狂とは異なり、ジャズクラブで聴くような落ち着きと包容力を持つ楽曲。
13. The Edge of Night
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ジャンル:スピリチュアル・ジャズ
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特徴:不穏さと重厚感を兼ね備えたナンバー。緊張感のあるフレーズが交錯し、即興的な展開がスリリング。アルバムのクライマックスを飾るにふさわしい迫力がある。
14. Off the Table
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ジャンル:エレクトロニック・ファンク
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特徴:アルバムを締めくくる明快なナンバー。明るいオルガンのソロと弾むようなグルーヴが印象的で、最後にポジティブな余韻を残す。
こんな人におすすめ!
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ヒップホップのビートとインストゥルメンタルが好きな人
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頭で聴くタイプの音楽を楽しめる人
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スピーカーから鳴る音に全神経を集中できる人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. The Bad Plus『These Are the Vistas』
ジャズ・トリオの枠を超え、ロックやポップを大胆にアレンジした作品である。即興演奏と構築性のバランスがMMWに通じる。
2. Soulive『Doin’ Something』
オルガンを中心としたトリオ編成で、ファンク色の強いグルーヴを展開する。ダンサブルでありながらジャズ的な深みを持つ点が共通している。
3. Esbjörn Svensson Trio『Strange Place for Snow』
北欧のジャズトリオによるモダンな名盤。エレクトロニカやポストロック的な要素を含み、実験性と叙情性を併せ持つ。
4. John Scofield『A Go Go』
ジャズギタリスト、John ScofieldがMMWと共演したアルバム。ファンクとジャズの融合を存分に楽しめる。
5. Herbie Hancock『Head Hunters』
ジャズ・ファンクの金字塔。シンセやエレクトリック楽器を駆使し、MMWの先駆的存在ともいえる実験精神が宿っている。
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まとめ
『Uninvisible』は、ジャズ・ファンクを基盤にしながら、ヒップホップやダブ、アンビエントといった要素を果敢に取り込んだMMWの代表作です。アルバム全体を通して「ジャズの可能性は無限である」というメッセージを体現しており、聴くたびに新しい発見があります。
伝統と革新の狭間で音楽を進化させ続けるMMWの姿勢が、このアルバムには濃縮されているのです。
