出典:YouTube
Slimkid3(The Pharcydeのメンバー)とDJ Nu‑Mark(Jurassic 5のDJ/プロデューサー)のコラボレーション・アルバム『Slimkid3 & DJ Nu‑Mark』は、2018年にリリースされました。
黄金期ヒップホップを受け継ぎつつ、ソウルフルで洗練された現代的サウンドに昇華したこの作品は、心地よいビートと温かいリリックが同居しており、まさに“真のヒップホップ”を再確認させてくれる1枚です。レトロフューチャーな感覚に浸れる、安定感と驚きに満ちた構成となっています。
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アーティストについて
Slimkid3ことTrevant Hardsonは、1990年代を代表するオルタナティブ・ヒップホップグループ、The Pharcydeのオリジナルメンバーとしてその名を馳せました。
彼の特徴は、まるで囁くようにメロディアスでありながらも、どこか憂いを帯びた独特のボーカルスタイルと、詩的で内省的なリリックです。The Pharcydeでの活動を通じて、彼は既成概念に囚われない自由な発想と、深い人間性を表現するラッパーとしての地位を確立しました。彼のフロウは、複雑なビートの上でも常にしなやかで、リスナーの心に深く食い込みます。
一方、DJ Nu-MarkことMark Potsicは、ヒップホップグループJurassic 5のメンバーとして、その卓越したDJスキルとプロデューシング能力で知られています。彼は、ターンテーブルを楽器として操るだけでなく、膨大なレコードコレクションからユニークなサンプルを見つけ出し、それを巧みに組み合わせることで、オーガニックかつ革新的なビートを生み出す達人です。
彼のプロダクションは、往年のファンクやソウルの要素を現代のヒップホップに落とし込み、リスナーを瞬時にヘッドバンギングさせるような中毒性を持っています。
この二人がタッグを組んだ本作は、それぞれの個性がぶつかり合いながらも、見事に調和した、まさにケミストリーの結晶と言えるでしょう。
アルバムの特徴・個性
このアルバムの最大の特徴は、オーガニックでソウルフルなビートと、リズミカルなラップの絶妙なバランスにあります。Slimkid3の滑らかで温かいフロウが、DJ Nu-Markの職人的なビートメイクと出会うことで、「90年代ロサンゼルス・ヒップホップのDNA」を現代にアップデートしたようなサウンドになっています。
また、アルバム全体に漂うのは「ポジティブな空気」と「成熟した落ち着き」です。Pharcyde 時代のようなアブストラクトさは影を潜め、代わりに“人生を見つめる大人の視点”が滲み出ています。どの曲にも派手なトリックはなく、音と言葉が誠実に響き合うのが印象的です。
『Slimkid3 & DJ Nu-Mark』全曲レビュー
1. Work Hard (feat. K-Natural)
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ジャンル:ファンキー・ヒップホップ、ブーンバップ
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特徴:アルバムの幕開けを飾る、躍動的なファンキーグルーヴが特徴のトラック。K-Naturalのソウルフルなボーカルと、Slimkid3の軽やかなフロウが心地よく絡み合い、文字通り「Work Hard」というテーマにふさわしい、ポジティブなエネルギーに満ちている。
2. Let Me Hit
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ジャンル:ブーンバップ、ジャズ・ヒップホップ
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特徴:クラシックなブーンバップのリズムと、ジャジーなエレメントが心地よいミディアムテンポのトラック。DJ Nu-Markのドラムブレイクはタイトでありながらも、暖かみのあるサンプルが楽曲全体にグルーヴをもたらしている。
3. I Know, Didn’t I
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ジャンル:ソウル・ヒップホップ、ファンク
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特徴:伝説のソウルシンガーDarondoをフィーチャーした、アルバムのハイライトの一つ。彼の甘くソウルフルな歌声が温かいファンクビートの上で輝いている。
4. Fade to Black
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ジャンル:ブーンバップ、リリカル・ヒップホップ
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特徴:J-Liveの参加が光る、リリカルかつスムースなブーンバップトラック。DJ Nu-Markのプロダクションは、シンプルながらも深みのあるドラムと、洗練されたサンプリングが特徴。
5. No Pity Party
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ジャンル:ファンキー・ヒップホップ、アップテンポ・ラップ
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特徴:タイトで疾走感のあるビートが特徴的な、アップテンポのトラック。「同情はいらない」という強いメッセージが込められたリリックは、Slimkid3のストレートなフロウによって力強く表現されている。
6. What Are Words For
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ジャンル:ミッドテンポ・ヒップホップ、ソウル
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特徴:メロウなシンセパッドと、温かいベースラインが心地よいミッドテンポのトラック。Slimkid3のメロディアスなボーカルが、楽曲に感情的な深みを与え、リラックスした雰囲気を醸し出している。
7. King
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ジャンル:ブーンバップ、ハードコア・ヒップホップ
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特徴:ヒップホップ界のレジェンドDiamond D.と、K-Naturalをフィーチャーした、重厚なブーンバップトラック。DJ Nu-Markのプロダクションは、力強いドラムと、ソウルフルなサンプルが特徴であり、各ラッパーの個性を引き立てている。
8. Bom Bom Fiya
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ジャンル:レゲエ・ヒップホップ、ファンク
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特徴:レゲエのリズムと、ファンクの要素が融合した、非常にグルーヴィーでダンサブルなトラック。Slimkid3のフロウも、いつもより軽やかで、聴き手を自然と踊らせるような魅力がある。
9. Godzilla or Gamera
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ジャンル:ブーンバップ、映画サントラ風ヒップホップ
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特徴:日本の怪獣映画へのオマージュを感じさせる、ユニークなテーマのトラック。Slimkid3のラップは、怪獣の戦いを描写するかのように、力強く、ダイナミック。
10. Bouillon
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特徴:Del the Funky HomosapienとMursという、個性的なラッパーをフィーチャーした、アルバムのクロージングトラック。複雑に絡み合うライムと、DJ Nu-Markによるジャジーで深みのあるビートが特徴。
こんな人におすすめ!
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90年代ヒップホップの黄金期を愛する人
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DJ Nu-Markのプロダクションに魅力を感じる人
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リリックとフロウの質を重視する人
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流行に左右されない、タイムレスなヒップホップを求める人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. A Tribe Called Quest『Midnight Marauders』
ジャズとヒップホップを融合した「ジャズ・ラップ」の金字塔であり、スムースで心地よいグルーヴが特徴。本アルバムが持つオーガニックなサウンドに通じるものがある。
2. Pete Rock & CL Smooth『Mecca and the Soul Brother』
ソウルフルなサンプルワークと、メロディックなラップが融合したクラシックなヒップホップアルバム。DJ Nu-Markのプロダクションスタイルに通じる「ブーンバップの美学」を感じられる。
3. Common『Like Water for Chocolate』
ネオ・ソウルやジャズの要素を深く取り入れた、オーガニックでスピリチュアルなヒップホップアルバム。本アルバムが持つ温かいサウンドと、普遍的なテーマ性に共感するリスナーにおすすめ。
4. Diamond D『The Diam Piece』
Golden eraヒップホップの王道を歩む本作は、本作「King」でのDiamond Dのフロウとシーン感を理解する上で極めて重要。
5. Del the Funky Homosapien & Murs『Murs 3:16: The 9th Edition』
二人の掛け合いによるリリカルな展開とソウルフルなサウンドは、本作「Bouillon」での深みと構成性に通じる構造を持っている。
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まとめ
Slimkid3 & DJ Nu-Markのセルフタイトルアルバムは、ヒップホップの「温故知新」を見事に体現した作品です。The PharcydeとJurassic 5という、それぞれのグループで名を馳せた二人の才能が融合し、クラシックなブーンバップに、ソウルやファンクのエッセンスを散りばめた極上のサウンドを生み出しました。
DJ Nu-Markの職人技が光るプロダクションは、各曲に豊かなテクスチャとグルーヴを与え、Slimkid3の唯一無二のフロウは、リリックに深みと人間味をもたらします。豪華ゲスト陣も加わり、アルバム全体が持つタイムレスな魅力は、ヒップホップの多様性と奥深さを再認識させてくれます。
何度でも聴ける中毒性とソウル性を持ち合わせており、ヒップホップ好きならぜひ押さえておきたい一枚と言えます。
