出典:YouTube
東京のライブハウスのフロアから生まれた、熱量と余白を同時に持つバンド、bed。
彼らが2023年8月30日にデジタルリリースした『Archives : May 27th 2023』は、“ライブ・レコーディング・アルバム”あるいは“アーカイブ・アルバム”として位置付けられた作品です。
その日はまさに、バンドが日々の演奏を積み重ねてきた“今”を切り取った瞬間。録音の揺らぎ、演奏のリアルな息遣い、会場の空気とともに届けられるこの作品は、単なるライブ盤以上に、bedが“今、ここにある”という証を音に刻んだものです。
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アーティストについて
bedは東京都内のクラブ/ライブハウスを中心に活動するオルタナティブ・ロックバンドで、活動開始から1年半足らずで渋谷のキャパ数百の会場を満員にするほど勢いを持っています。
メンバー構成や細かなプロフィールは公開されてはいないものの、彼らの音楽性にはアンビエント、ポストロック、ドローン、シューゲイザー、実験音楽的なテクスチャーが見え隠れし、従来のロック・バンドとは一線を画す存在感があります。
そして彼ら自身が、「ツアーを打つ、フェスに出る、メディアに出る、そのためにアルバムを出す。そんなやり方はbedには必要ない」という姿勢を明言しており、自らの表現と演奏に妥協しない姿勢がその音に刻まれています。
アルバムの特徴・個性
『Archives : May 27th 2023』の最大の特徴は、“ライブという瞬間”をそのまま記録したアーカイブ作品であるという点です。
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タイトル通り、2023年5月27日に行われたライブのレコーディング音源を収録しており、スタジオ録音では得られない臨場感・揺らぎ・空間の響きがそのまま詰まっています。
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音楽的には、アンビエント的な余白、ポストロック的なスケール、ラウドでありながらも空気を残す演奏が混在。演奏の“生”の部分を丁寧に切り取っており、聴く者をライブ空間へと誘う構造になっています。
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収録時間28分程度という短さながらも、その中にバンドの現在地が凝縮されており、音楽を“聴く”のではなく“体験する”作品となっています。
このように、本作は音楽的な完成度というよりも、演奏と時間が交差した記録的ドキュメントとしての魅力を持っており、bedというバンドの“今”を知るうえで重要な一枚です。
『archives:May 27th 2023』全曲レビュー
1. mother ship – live.
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ジャンル:インディロック、オルタナティブ
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特徴:ライブ冒頭から、静かなシンセと淡いギターのアルペジオが空間を支配する。やがてリズムが入ると、声の揺れとビートの噛み合わせが高揚感を生み出す。中盤のブレイク後、控えめな即興ギターと観客の呼吸が混ざり合い、緊張と共感の間を揺れ動く構造。
2. APOLOGIZE – live.
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ジャンル:インディロック、オルタナティブ
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特徴:音と音の間に広がる「間」が聴き手の意識を内側へと向かわせる。謝罪や後悔をテーマにしたリリックがストレートに表現され、内省として胸に響く
3. ISEI – live.
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ジャンル:ポストロック、ドローン
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特徴:ドラムやベースの音像も前に出過ぎず、それゆえ歌詞とメロディが際立つトラック。ドローン的な要素とポストロック特有の叙情性が融合し、幻想的・ナルシスティックな雰囲気を漂わせる洗練された演出が印象深い。
4. Kare Wa (2.0) – live.
5. Michael Mann – live.
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ジャンル:ドローン、ダーク・アンビエント
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特徴:映画的で広がりあるサウンドスケープを展開している。静けさと緊張感が同居する、ダークで不穏なムードを持つドローン曲。低音域のドローンと不規則に鳴り響くノイズが、まるで深い森の中で迷い込んだかのような不安感を煽る。
6. Eventually – live.
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特徴:美しいシンセサイザーのレイヤーとスローなビートで始まり、少しずつ音が重なって盛り上がる構造。サビで心が解放される瞬間があり、観客の共鳴と高揚感を引き出すアンセム的構成。
7. 2003 (Arrangement) – live.
こんな人におすすめ!
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インディ/ローファイな音像に共鳴する音楽ファン
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ライブの臨場感や、生々しい音響を楽しみたい人
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実験的な音楽や、新しいサウンドに触れたい人
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特定の情景や記憶を音楽で呼び起こす体験が好きな人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. Stars of the Lid『The Tired Sounds of Stars of the Lid』
アメリカのデュオによるドローン・アンビエントの傑作。ストリングスやギター、シンセサイザーによる美しい音のレイヤーが、壮大で瞑想的なサウンドスケープを描く。
2. Fennesz『Endless Summer』
オーストリアの音楽家によるエレクトロニカとノイズ、アンビエントの要素を融合させた傑作。ギターの音をデジタル処理し、ノイズやグリッチを伴う美しい音響風景を作り出す。
3. Tim Hecker『Ravedeath, 1972』
カナダの電子音楽家による、ノイズとドローン・アンビエントを融合させた、挑戦的な作品。教会のオルガン演奏をサンプリングして大胆に歪ませ、ノイズとグリッチを加えて再構築している。
日本のエクスペリメンタル・ロックバンド、Borisによるアルバム。ヘヴィなドローン・サウンドとサイケデリックなノイズ、ポストロック的な叙情性が融合している。
5. Grouper『Dragging a Dead Deer Up a Hill』
Liz Harrisによるソロプロジェクト。ローファイな録音環境と深いリバーブに包まれた幽玄な歌声、ノイズやギタードローンが特徴の実験的フォーク・アンビエント。
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まとめ
bed『Archives : May 27th 2023』は、彼らのライブという瞬間をそのまま切り取った、リアルな演奏の記録であり、音響体験としても成立した作品です。録音の揺らぎ、観客の気配、演奏の“今”を音で味わえるこのアルバムは、バンドの“今”を知るために最適な入口です。
ポストロック/インディロック/ライブ録音の持つ魅力を改めて感じたいリスナーにとっては、じっくり聴く価値のある一枚であると言えます。
