出典:YouTube
クラブジャズやハウスを軸にしつつ、ジャズ、ラテン、ソウル、クラシックなど多彩な音楽要素を織り交ぜて活動してきたプロデューサー/ピアニスト、Jazztronik(ジャズトロニック/野崎良太)。その作品群はクラブミュージックの現場でもリスニングシーンでも支持され、国内外のリスナーに愛されてきました。
2007年にリリースされたアルバム『七色』は、まさにその名の通り“七色”の音楽性を持つ作品です。Jazztronikのクラブ的なダンスグルーヴと、生楽器を駆使した有機的で繊細なアンサンブルが共存しており、単なるクラブジャズを超えたスケール感を持っています。聴き手の感情に寄り添いながら、シーンを鮮やかに彩るアルバムなのです。
アーティストについて
Jazztronikは野崎良太のソロ・プロジェクトとして1998年から活動を開始しました。初期から「Samurai」「Now」などのクラブヒットを放ち、ヨーロッパのクラブシーンでも注目を浴びています。
特徴は、クラブミュージック的なリズムの構築と、ピアノを軸にしたジャズやクラシックの知識を融合させたサウンドデザイン。DJ的な即効性と音楽家としての緻密さを兼ね備えた稀有な存在といえるでしょう。
アルバムの特徴・個性
『七色』は、アルバム全体を通じてクラブジャズをベースにしながら、ソウル、ラテン、ポップス、エレクトロニカといった多様な音楽をシームレスに取り込んでいることが大きな特徴です。派手さよりも、色彩豊かな感情の表現に比重が置かれており、どの曲も「音楽で語る物語」としての完成度が高いです。
また、歌モノとインストのバランスが絶妙で、リスニング体験としても、DJプレイに取り込んでも機能する二面性を備えています。アルバムタイトル通り「七色の感情」を旅するような聴き心地で、リスナーを多彩な景色へと連れて行ってくれるのです。
『七色』全曲レビュー
1. 七色
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ジャンル:クラブ・ジャズ/ソウル
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特徴:アルバムの幕開けにふさわしい華やかな楽曲。軽やかなピアノとグルーヴィーなリズムが融合し、色彩豊かな世界観を提示する。歌モノでありながら、ジャズ的な自由さとクラブ的な即効性を両立している。
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ジャンル:エレクトロ・ジャズ/ワールドミュージック
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特徴:力強いビートと和的な旋律が絡み合い、壮大なスケールを描き出す楽曲である。タイトルの「鳳凰」にふさわしく、荘厳さと神秘性を併せ持つ。ライブでの高揚感も想像できる、エネルギッシュなナンバー。
3. Arabesque
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ジャンル:ラテン・ジャズ/クラブ・ハウス
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特徴:アラベスク(唐草模様)のように複雑で流麗な旋律が展開される楽曲。パーカッションが前面に出ており、躍動感とエキゾチックなムードを漂わせる。ジャズの即興性とクラブ的構造が見事に溶け合っている。
4. Magic Lady (Interlude)
5. Don’t Hold in Your Tears
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ジャンル:ソウル/R&B
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特徴:感情をストレートに吐き出すヴォーカルが印象的なバラード。ジャズ的コード感を持ちながら、R&B的なメロディの親しみやすさが融合している。涙をこらえず解き放つことを肯定する、エモーショナルな楽曲。
6. Nana
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ジャンル:アフロ・ジャズ/クラブミュージック
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特徴:リズミカルなパーカッションと土着的なエネルギーを感じさせるトラック。反復するリフとダンスビートが中毒性を生み、クラブでの爆発力を持つ。
7. Sky Fallin’
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ジャンル:ハウス/クラブ・ジャズ
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特徴:疾走感のあるビートにソウルフルなヴォーカルが重なるアッパーな楽曲。空から降り注ぐようなサウンドの広がりが、ダンスフロアを想起させる。
8. Someday (Etude For The Right)
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ジャンル:クラシカル・ジャズ/バラード
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特徴:ピアノを主体にした美しい楽曲。クラシック的な構成とジャズ的な即興の要素が交錯し、叙情的かつ知的な響きを持つ。タイトルの「Etude」が示すように、音楽的練習曲的側面を持ちながら、深い感情を伴う作品。
9. 影
10. SAMURAI-侍 (Album Version)
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ジャンル:クラブ・ジャズ/ハウス
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特徴:Jazztronikの代表曲のひとつ。和の旋律とクラブビートを融合させ、侍のスピリットを現代的に表現している。アルバムバージョンでは、よりストイックでドラマティックな展開が加えられている。
11. Walk into the Memory
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ジャンル:クラブ・ジャズ/バラード
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特徴:アルバムのラストを飾るにふさわしい、叙情的で美しい楽曲。ピアノと歌のシンプルな構成ながら、過去の記憶を優しく包み込むような深い情感を持つ。余韻を残しつつ物語を締めくくる。
こんな人におすすめ!
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クラブ・ジャズやハウスに興味がある人
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ジャズとポップスの架け橋のようなサウンドを求める人
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都会的でありながら情緒的な音楽が好きな人
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DJ的なダンスチューンもバラードも両方楽しみたい人
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日常を彩る音楽を探している人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. Kyoto Jazz Massive『Spirit of the Sun』
日本のクラブジャズを代表する松浦俊夫と沖野好洋によるユニット、Kyoto Jazz Massiveが2002年に発表したアルバム。ジャズの洗練された和声感とクラブミュージックの反復的なグルーヴが融合したサウンドは、「ダンスフロアでもリスニングでも楽しめる」二面性を持っている。
2. Soil & “Pimp” Sessions『Pimp Master』
2004年にリリースされたSoil & “Pimp” Sessionsの代表作。彼らは「デス・ジャズ」と称される激しい演奏スタイルで知られ、アグレッシブなブラスと強烈なリズムセクションが特徴。ジャズをクラブ的な文脈に置き換え、即興性とダンスミュージックを架橋するという意味で、同じ系統の延長線上にある作品といえる。
3. St Germain『Tourist』
2000年にフランスから世界的ヒットを記録したアルバム。ディープ・ハウスのリズムを基盤に、ジャズやブルース、アフリカ音楽を取り込んだサウンドが特徴的。特にサンプルを駆使しながらジャズ的な響きを生み出すアプローチは、Jazztronikの音楽構築法と響き合うものである。
4. Toshio Matsuura presents HEX『Hex』
Kyoto Jazz Massiveの松浦俊夫が手がけたプロジェクトで、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロニカなどを融合した実験的作品。より実験色が強く、音響芸術としてのクラブジャズを追求した点で、Jazztronikのポピュラリティと対照的な立ち位置を占めている。
5. Monday Michiru『Naked Breath』
シンガー/フルート奏者のMonday満ちるによる2003年のアルバム。ソウルフルなヴォーカルを中心に、クラブジャズやR&B、ラテン的要素を自在に取り込み、都会的かつ親しみやすいサウンドを提示している。
リンク
まとめ
『七色』はその名の通り、ジャンルやスタイルを超えて七色に輝くアルバムです。
クラブジャズを軸にしながらも、ソウル、ラテン、エレクトロニカ、日本的要素など多彩な音楽を取り込み、リスナーの心を豊かに彩ってくれます。
ダンスフロアで踊るためにも、日常に寄り添うためにも楽しめる傑作であり、Jazztronikの音楽家としての懐の深さを堪能できる一枚です。