出典:YouTube
2002年、ジャズとソウル、ファンクを新しい世代の耳で再定義した1枚が登場しました。それが、Soulive(ソウライヴ)『Next』です。
伝統的なオルガン・トリオのフォーマットを軸にしながらも、ヒップホップやR&Bの文脈をナチュラルに吸収し、グルーヴで語る音楽を極めた名作。“ネオ・ジャズ”という言葉がまだ定着していなかった時代に、彼らはすでに次のステージを見せていました。
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アーティストについて
Soulive(ソウライヴ)は、ニューヨークを拠点に活動する3人組のインストゥルメンタル・ユニットです。メンバーはEric Krasno(ギター)、Neal Evans(ハモンドB-3オルガン/キーボード)、Alan Evans(ドラム)。兄弟リズム隊(Neal & Alan Evans)を中心に、エリックのジャジーでブルージーなギターが絡む独自のトリオ・サウンドを展開しています。
1999年の自主制作デビュー作『Get Down!』、2001年の『Doin’ Something』で注目を集め、Blue Noteと契約してリリースされたのが本作『Next』です。
彼らの魅力は、伝統とモダンの調和にあります。ジャズの即興性を保ちながらも、構成やサウンドの設計にはポップスやヒップホップのセンスが生きており、「クラブで踊れるジャズ」「グルーヴするソウル」を体現しているのです。
アルバムの特徴・個性
『Next』は、Souliveが“インスト・トリオ”という枠を越え、より広い音楽的ビジョンを打ち出した転換点のアルバムです。
ゲスト陣には、R&BのAmel LarrieuxThe RootsのドラマーQuestlove、ヒップホップ・アーティストTalib Kweliなどが参加。
ジャズ・ファンクの枠を軽やかに飛び越え、ヒップホップ的アティチュードとソウルの温もりを同居させています。
タイトルの“Next”が示すように、彼らにとっての「次の段階」は、“プロデュースされたジャズ”の世界。それは即興を音響デザインの中に落とし込むという挑戦であり、結果として、21世紀以降のジャズ・ファンクを定義づける作品となりました。
『Next』全曲レビュー
1. Tuesday Night’s Squad
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特徴:冒頭からドラムのシャープなグルーヴが炸裂する、アルバムの幕開けにふさわしい1曲。ギターとオルガンのユニゾンがスリリングで、ハモンドの熱量がそのまま空気を震わせる。70年代のGrant GreenやJimmy McGriffの流れを現代化したようなオープナー。
2. Flurries
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ジャンル:アシッド・ジャズ/インストゥルメンタル・ソウル
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特徴:柔らかなコード感と空間的なミキシングが印象的。Eric Krasnoのギターがメロウな旋律を描き、Neal Evansのオルガンが浮遊感を支える。夜の都会を流れるような、洗練されたジャズ・ソウル。
3. Liquid
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ジャンル:ジャズ・フュージョン/グルーヴ・ジャズ
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特徴:タイトルの通り、“液体的”な流動感を持つトラック。ドラムのシンコペーションが滑らかに展開し、ギターとオルガンが波のように絡む。ジャズ・ファンクというよりも、よりモダンで洗練された音響空間が広がる。
4. Joyful Girl
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ジャンル:アコースティック・ソウル/ジャズ・フォーク
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特徴:Ani DiFrancoの名曲をSoulive流に再解釈したカバー。Dave Matthews(Dave Matthews Band)とTrey Anastasio(Phish)の参加により、アコースティックとジャズの融合が温かく響く。メロウでありながら、バンドのグルーヴ感がしっかりと残る絶品トラック。
5. Kalen
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ジャンル:ジャズ・ファンク/グルーヴ・インストゥルメンタル
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特徴:Souliveらしいリズムの精密さが際立つ、ストレートなインスト曲。ベースを担うNealの左手が圧巻で、Krasnoのギターが鋭く切り込む。ジャズとファンクの中間地点にある、いわば“グルーヴの教科書”的トラック。
6. Clap!
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ジャンル:ソウル・ジャズ/パーティー・ファンク
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特徴:タイトルの通り、手拍子が入る祝祭的なナンバー。ライブ感に満ちた演奏で、聴衆の一体感をそのまま音に封じ込めたような勢いを持つ。ハモンドの厚みとギターのカッティングが交錯し、アルバム前半のピークを形成する。
7. Interlude
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ジャンル:アンビエント・ジャズ
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特徴:短いながらも美しい余韻を持つインタールード。エレピのサウンドが柔らかく揺れ、アルバム全体の流れを滑らかに繋ぐ。単なる繋ぎではなく、次曲への呼吸のような役割を果たしている。
8. Ne-Ne
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ジャンル:ジャズ・ファンク/グルーヴ・ソウル
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特徴:Souliveらしい、スネアの抜けが良い軽快なファンクチューン。Alanのドラミングが絶妙に跳ね、Krasnoのギターがブルースの色を添える。グルーヴの粘りが心地よく、ライブでの定番曲としても知られる。
9. I Don’t Know
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ジャンル:ソウル/R&Bクロスオーバー
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特徴:ヴォーカルをフィーチャーした柔らかなR&Bトラック。ソウルフルなメロディラインと、ジャズ的ハーモニーのバランスが絶妙。この曲で彼らは“楽器だけでなく感情も歌う”バンドであることを証明している。
10. Whatever It Is
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ジャンル:ネオ・ソウル/グルーヴ・ジャズ
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特徴:中盤以降、アルバムのムードが再び滑らかに沈み込む。メロウなテンポ感と柔らかいコード進行が美しい。静かな夜や深夜ドライブに最適な、内省的で成熟した一曲。
11. Alkime
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ジャンル:ファンク/フュージョン
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特徴:Krasnoのギターリフが主導する、ファンク色の強いトラック。オルガンがリズムに絡みながら、アドリブの妙を発揮する。アルバム全体の中で最も“演奏バンド”としての力を感じるナンバー。
12. E.D. Hambone
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ジャンル:ジャズ・ファンク/エクスペリメンタル・グルーヴ
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特徴:変則的なリズムパターンを多用した、挑戦的な曲。ジャズ的な即興性とエレクトロ的なミキシングが融合し、トリオの実験精神が光る。次の“Remix”へ向けた緊張感を保ちながら、アルバム終盤を盛り上げる。
13. Bridge to ‘Bama (Remix)
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ジャンル:ジャジー・ホップ/ブレイクビート・ファンク
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特徴:The RootsのQuestloveが関わるRemixバージョン。ヒップホップのブレイクビーツ的構成に生演奏の熱量を重ね、Souliveの“ヒップホップ感覚”を明確に打ち出している。アルバムのラストを飾るにふさわしい、未来志向のジャズ・ファンク。
こんな人におすすめ!
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ジャズとソウルの間を自由に行き来する音楽が好きな人
- タイトな演奏のグルーヴを好む人
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JamiroquaiやThe Brand New Heaviesのようなグルーヴ・サウンドが好きな人
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RootsやCommonなど、ヒップホップと生演奏の融合に魅力を感じる人
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夜のカフェやバーで自然に流れる、上質なジャズ・ファンクを探している人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
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Medeski Martin & Wood『Combustication』
オルガン・トリオによるアヴァン・ファンクの傑作。エレクトリックな質感とジャズの自由度を両立した先駆的作品。 -
The New Mastersounds『Be Yourself』
イギリス発のファンク・バンドによる、Souliveに通じる粋なグルーヴ・アルバム。リズムのキレとメロウさのバランスが秀逸。 -
Roy Hargrove’s RH Factor『Hard Groove』
トランペッターRoy HargroveがR&B・ヒップホップを融合した現代ソウル・ジャズの金字塔。Souliveと同時代の“新黒人音楽”の核。 -
Robert Glasper Experiment『Black Radio』
R&Bとジャズの境界を完全に溶かした革新的作品。Souliveが提示した「グルーヴするジャズ」の進化形といえる。 -
The Greyboy Allstars『What Happened to Television?』
西海岸のファンク・ジャズ・シーンを代表するバンド。Souliveの東海岸的タイトさとは対照的なゆるいグルーヴを展開している。
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まとめ
『Next』は、Souliveが「伝統」と「未来」を自在に行き来する、その柔軟な音楽性を決定的にしたアルバムです。
ハモンド・オルガンの温かい音色、ソリッドなドラム、メロウなギター。それらが一体となり、ジャズでもファンクでもR&Bでもない“新しいグルーヴ”を生み出しています。
この作品は、「インストゥルメンタルでも魂は歌う」という信念の証。そして、2000年代初頭のジャズ・リヴァイヴァルの中で、もっとも自然体で進化を遂げた傑作です。
