出典:YouTube
2015年、MIYAVIが放ったアルバム『The Others』は、彼のキャリアの中でも転換点ともいえる作品です。
デビュー当初のヴィジュアル系~ギタリスト期を経て、世界市場を意識した「グローバル・ロック」へと舵を切ったMIYAVIは、この作品でその方向性を明確に結晶化させました。
本作は、シンガーソングライターというよりも、ギタリスト/プロデューサー/メッセンジャーとしてのMIYAVIを中心に据え、“多様性”“他者との共存”“グローバル・アイデンティティ”をテーマに掲げた、非常に意識的なポップ・ロック作品です。
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アーティストについて
MIYAVI(石原崇雅)は、2000年代初頭に登場した日本のギタリストであり、ピックを使わないスラップ奏法によって世界的な注目を浴びました。その独自のスタイルは、単なる技術の域を超え、リズムとメロディを同時に叩き出す“肉体的音楽”そのものです。
2009年以降は本格的に海外進出を果たし、L.A.を拠点に活動。また、2014年にはハリウッド映画『Unbroken』に出演し、世界にその存在を知らしめました。『The Others』はその流れを受けて制作され、アメリカのプロデューサー Drew Ramsey と Shannon Sanders(John Legend, India.Arieなどを手掛けたコンビ)を迎えて完成しました。
つまり本作は、MIYAVIが“ギタリスト”から“表現者”へと進化した証明であり、音楽的にも最も国際的な完成度を誇るアルバムなのです。
アルバムの特徴・個性
『The Others』は、ファンク、ソウル、ロック、エレクトロニックが共存する“ハイブリッド・ポップ”です。
MIYAVI特有のギター・スラップが要となりながらも、単なるテクニックに終始していません。そこにあるのは「違うからこそ美しい」という人間賛歌であり、音とリズムが共生するポジティブな世界観です。サウンドの基調にはブラックミュージックのエッセンスが強く、リズムの細部にファンクの切れ味を感じさせます。
また、Drew Ramseyらのアメリカ南部的ソウル感覚が、MIYAVIのクールな質感に温かみを与えています。世界を渡り歩いてきた彼だからこそ鳴らせる“地球規模のオルタナティブ・ロック”——それが『The Others』の真の姿です。
『The Others』全曲レビュー
1. Cruel
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ジャンル:オルタナティブ・ロック/ファンクロック
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特徴:アルバム冒頭を飾る曲であり、鋭いギタースラップと重厚なリズムが交錯する。タイトル通り“冷酷さ”をテーマにしながらも、その中にある人間の脆さと情熱を描く。MIYAVIのボーカルがよりソウルフルに響き、彼が新しい声を手に入れたことを実感させる。
2. Into The Red
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ジャンル:エレクトロロック/インダストリアル
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特徴:デジタルビートと生ギターの融合が生み出す緊迫感に満ちたナンバー。赤という象徴色を用いて、内なる情熱や危うさを表現している。スラップの鋭さと電子音の冷たさが共存し、アルバム全体のトーンを引き締める。
3. Come Alive
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ジャンル:ポップロック/ソウルポップ
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特徴:軽快なテンポと開放的なメロディが印象的で、聴く者を前向きにさせる一曲。歌詞は“目を覚ませ”“生きて動け”というメッセージを中心に展開され、アルバムの中でも最もストレートなポップソング。ギターがさりげなくリズムを刻み、声が主役となっている構成が新鮮。
4. Alien Girl
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ジャンル:エレクトロ・ファンク/オルタナティブ
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特徴:異質な存在への共感をテーマにした一曲。電子的な質感の中に有機的なギターリフが入り込み、異星的な世界観を形成している。リズムが複雑に絡み合い、まるで地球外生命体とのセッションのような浮遊感を生み出している。MIYAVIの遊び心とアート性が融合した異色の楽曲。
5. Let Go
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ジャンル:ファンクロック/エレクトロポップ
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特徴:“手放すことの強さ”をテーマにしたダンサブルなナンバー。リズムのキレとコーラスの厚みが絶妙で、まさにライブの定番となる力強さを持つ。ギターのカッティングがリズムそのものを支配し、全身を揺らす快楽的グルーヴが貫かれている。
6. Odyssey
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特徴:アルバム中盤のハイライト。旅路(Odyssey)を象徴する浮遊感あるサウンドスケープが広がる。静かなイントロから壮大なクライマックスへ至る構成は映画的であり、海外制作陣のセンスが光る。人間の内面と宇宙的スケールが交錯する一曲。
7. All The Way
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ジャンル:ポップロック/アンセム
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特徴:突き抜けるようなサビと、明確なリズムパターンが心を打つ。全力で突き進むというメッセージを、ミニマルな構成の中に閉じ込めた楽曲。ギターとボーカルの対話が心地よく、ライブでの一体感を意識した構成。
8. Unite
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ジャンル:ロック/アンセムロック
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特徴:“The Others”と並ぶアルバムの軸であり、団結・共存のメッセージが真っ直ぐに響く。サビのコーラスが圧倒的で、群衆の声がひとつになる瞬間を感じさせる。演奏よりもメッセージの力で人を動かす、成熟した表現に到達している。
9. The Others
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ジャンル:オルタナティブ・ソウルロック
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特徴:アルバムタイトル曲にして、最も象徴的なトラック。ゴスペル的コーラス、壮大なサウンド、“他者と共に生きる”という普遍的テーマ。MIYAVIのヴォーカルが感情の臨界点に達し、彼の新しいアイデンティティを明確に提示する。まさに本作の心臓部。
10. Calling
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ジャンル:ポップ・ロックバラード
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特徴:静かな導入から徐々に熱を帯びていく構成が美しい。孤独や迷いを抱えた人々に向けて“呼びかける”ように歌う姿勢が印象的。サウンドは控えめだが、感情の深みは全曲中でも屈指。
11. Shangri-La
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ジャンル:エレクトロ・ポップ/アンビエント・ロック
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特徴:電気グルーヴのカバー。理想郷=Shangri-Laを探し続ける人間の旅を描き、穏やかでありながらも強い余韻を残す。ギターが涙のように響き、光の中へ溶けていくようなラスト。
こんな人におすすめ!
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国境を越えたロックやポップを聴きたい人
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ギターという楽器を“言葉”として感じたい人
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U2やLenny Kravitzのような人間味あるアンセムロックが好きな人
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世界を意識した日本人アーティストの音楽に興味がある人
- ストレートでポジティブなメッセージを求める人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
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Lenny Kravitz『Strut』
ファンクとロック、ソウルを横断する作品であり、肉体的なグルーヴとメッセージ性が融合している。MIYAVIと同じく“音で自己を肯定する”姿勢が際立つ。 -
John Mayer『Continuum』
内省的な歌詞と洗練されたギタープレイが共存する、現代ブルースロックの名盤である。『The Others』の成熟した音楽性と呼応する。 -
Prince『Musicology』
ソウルとロックを融合した現代ファンクの金字塔。MIYAVIのファンクネスやリズム感覚は、明らかにPrince的な美学を継承している。 -
Gary Clark Jr.『Blak and Blu』
ブルースを核にしながら、現代的ビートやロックの要素を取り入れた傑作。ギターが語り、声が叫ぶ構造はMIYAVIの音楽哲学に通じる。 -
Imagine Dragons『Smoke + Mirrors』
エレクトロとロックの融合をテーマにした作品であり、『The Others』と同時代的な“グローバル・ロック”の系譜にある。壮大でポジティブなエネルギーを共有するアルバム。
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まとめ
『The Others』は、MIYAVIが“個の技巧”を超えて“普遍的メッセージ”を手にしたアルバムです。ギターという武器を使いながらも、それ以上に「声」や「思想」で世界に語りかける作品となりました。
この作品は、単にロックアルバムとして優れているだけではなく、“他者と共に生きるための音楽的マニフェスト”なのです。MIYAVIという存在が、世界を結ぶ「架け橋」であることを証明した、彼の代表作のひとつです。
