出典:YouTube
1990年代後半、UKのクラブミュージックは急速に多様化し、ジャングル/ドラムンベースはその中心に位置する存在でした。ハードコア・ブレイクビーツから進化したこのジャンルは高速かつ切り裂くようなリズムで知られていましたが、その一方で“アルバム作品”としてまとめあげるのは至難の業でもありました。
そんな中、Roni Sizeと彼のクルー Reprazent が発表した『New Forms』は、ジャングル/ドラムンベースを一つの“音楽作品”として成立させた歴史的アルバムです。
本作は1997年のマーキュリー賞を受賞し、ジャンルの地位を確立した決定的な作品として今も語り継がれています。
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アーティストについて
Roni Size はブリストル出身のプロデューサーで、90年代初頭からジャングル/ドラムンベースの形成期を支えた人物です。彼のスタイルは、ヘヴィなブレイクビート、複雑なベースライン、そしてジャズやソウルへの愛情が特徴で、Reprazent のメンバーと共にライブバンド形式でドラムンベースを提示したことでも知られています。
緻密なサンプリングと大胆なグルーヴの両立、さらに黒人音楽の伝統とクラブカルチャーを結びつけるセンスは他の追随を許さず、ブリストル・サウンドの象徴的存在として世界の音楽史に残るアーティストです。
アルバムの特徴・個性
『New Forms』は、ドラムンベースを単なるクラブ向けのダンスミュージックに留めず、“アルバムとして聴かせる構造” を強く意識して作られています。
生演奏のベースやドラム、ジャズ的ハーモニー、ラップ、ソウルフルな歌唱など、ジャンルを横断する要素が多数取り入れられており、その多様性が本作最大の魅力です。
特に光るのが、ジャングル的な高速ブレイクビートと、しなやかにうねるアコースティックベースの組み合わせです。Roni Size が世界的に注目されるきっかけになったこの手法は、現在でも影響力が非常に大きく、ジャズ×ドラムンベースの原型といえるほど高い完成度を誇ります。
また、アルバム全体の構成はじっくりと聴くほどに奥深さが増し、ビートの細部やサンプルのコントラストに気づくたび、新たな発見が生まれるよう設計されています。クラブミュージックでありながらヘッドホンで没入できる作品として、非常にユニークな存在です。
『New Forms』全曲レビュー
【Disc 1】
1. Railing
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特徴:アルバムの幕開けとして、ざらついた質感の語りとミニマルなビートが空間を切り裂くように配置されている。硬質なブレイクビートの基礎を置きながらも、音数を削ぎ落とした構造により、浮遊感と緊張感が共存するイントロダクション。
2. Brown Paper Bag
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ジャンル:ジャズ・ドラムンベース
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特徴:アコースティックベースの印象的なリフが全てを引っ張る名曲。ドラムの細かいハットワーク、柔らかいパッド、ストリングスサンプルが交錯し、ジャズとクラブの境界を曖昧にする革新的サウンドを確立している。
3. New Forms
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ジャンル:ヒップホップ/ドラムンベース
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特徴:Bahamadia のスムースなラップが疾走するビートに完璧にフィットしている。MC と高速ブレイクビートの融合は当時として極めて斬新で、ヒップホップとのクロスオーバーの成功例として今なお高く評価される。
4. Let's Get It On
5. Digital
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ジャンル:ジャングル/ハードステップ
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特徴:荒々しいビート、鋭利なベースライン、緊張感の強いサンプルが、初期ジャングルのスピリットを感じさせる。アンダーグラウンド感の強い一曲。
6. Matter of Fact
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ジャンル:ミニマル・ドラムンベース
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特徴:抑制されたシンセと均整の取れたリズムが続く、淡々としていながら深みに満ちた楽曲。音の配置の巧みさが際立つ。
7. Mad Cat
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ジャンル:アトモスフェリック・ドラムンベース
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特徴:細かく揺れるビートと跳ねるベースラインが特徴で、異様な軽快さが魅力。キャッチーな反復が中毒的。
8. Heroes
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ジャンル:ヴォーカル・ドラムンベース
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特徴:Onallee の神秘的な歌声とドラマチックなコード進行が融合した名曲。壮大でありながら、ビートはタイトで疾走感を保つ。
9. Share The Fall
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ジャンル:ソウルフル・ドラムンベース
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特徴:温かみあるボーカルと柔らかい音色が漂い、アルバムの中でも特にメロディを重視した楽曲。ジャングルの激しさとは対照的なリリカルさが光る。
10. Watching Windows
11. Morse Code
12. Destination
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ジャンル:ソウルフル・ドラムンベース
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特徴:美しいコード進行が印象的な、アルバム前半と後半をつなぐような楽曲。余白を生かした音作りが秀逸で、ドラムンベースの枠を超えた“現代的ソウルミュージック”の質感がある。
【Disc 2】
1. Intro
2. Hi-Potent
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ジャンル:ドラムンベース
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特徴:緊張感のあるベースと高速ブレイクが強力なフロアトラック。ディープな夜のクラブを思わせる“濃密な疾走感”が魅力。
3. Trust Me
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ジャンル:ボーカル・ドラムンベース
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特徴:温かみのある女性ボーカルが入り、ディープでありながらも柔らかいムードをまとった楽曲。Disc2の中で最も“歌もの”としての完成度が高い。
4. Change My Life
5. Share The Fall
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ジャンル:ソウル/ドラムンベース
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特徴:感情的なボーカルが印象的で、広い空間を感じさせる美しい曲。Reprazentのライブ感が最も強く感じられる楽曲の一つ。
6. Down
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ジャンル:ダーク・ドラムンベース
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特徴:重いベースと陰影の強いビートが特徴で、Disc2の中でも特に“深夜の黒さ”を帯びている。地下室のような閉塞感が魅力。
7. Jazz
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ジャンル:ジャズ /ドラムンベース
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特徴:タイトル通りジャズ要素が濃厚。スネアの跳ね方、アコースティック感のあるベース、コードの展開など、フロアにもリスニングにも対応した名曲。
8. Hot Stuff
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ジャンル:ダンス/ドラムンベース
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特徴:勢いのあるビートとファンキーなフレーズが組み合わさった熱量の高い楽曲。クラブでの爆発力が高いトラック。
9. Ballet Dance
10. Electricks
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ジャンル:エレクトロ/ドラムンベース
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特徴:電子音の断片が散りばめられ、テック感が強い。攻撃性の高さがフロアの緊張を作るトラック。
11. Western
12. Sounds Fresh
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ジャンル:ドラムンベース
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特徴:軽やかなブレイクと明るいシンセが特徴のラストトラック。爽やかな余韻を残しながらDisc2を締めくくる。
こんな人におすすめ!
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ドラムンベースの入門に最適な名盤を探している人
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ジャズやソウルの要素を含むダンスミュージックが好きな人
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電子音と生演奏の融合が好きな人
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クラブミュージックの歴史的名盤を体系的に知りたい人
同じ系統のアルバム5選
1. Goldie『Timeless』
ブレイクビートとアンビエントが融合した壮大なドラムンベース作品。Roni Size とは異なる荘厳さを持つ名盤。
2. LTJ Bukem『Logical Progression』
アトモスフェリックD'n'Bの決定作であり、上品で宇宙的なサウンドが特徴。Roni Size のジャズ性とは異なる高揚感がある。
3. Photek『Modus Operandi』
精密機械のようなブレイクビートを展開する、ミニマルD'n'Bの最高峰。硬質な方向性を求めるリスナーに最適。
4. 4hero『Two Pages』
ジャズ、ソウル、オーケストラまで巻き込んだ壮大なクロスオーバー作品。ドラムンベースの“芸術的深化”を象徴している。
5. Kosheen『Resist』
ドラムンベースとロック、ポップスの融合を試みたアルバム。歌物D'n'Bの進化形として聴く価値が高い。
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まとめ
『New Forms』は、ドラムンベースというジャンルを世界へ押し広げた歴史的作品であり、今もなお新鮮さを失いません。
ジャズ、ソウル、ヒップホップ、トリップホップのエッセンスを巧みに織り込み、高速ビートでありながら“音楽としての深さ”を味わえる名盤です。
電子音楽好きはもちろん、ジャズやソウル、ヒップホップに馴染みのあるリスナーにも響く普遍性があり、ドラムンベースという音楽が持つ可能性を知る上で欠かせない一枚です。
