出典:YouTube
Nujabes以降のジャジー&メロウなビートメイクが世界的に評価される中、独自の温度感と精神性を持ったアーティストとして静かに存在感を放ち続けてきたNOMAK。その中でも 『CALM』 は、彼のディスコグラフィの中でも最もコンセプチュアルで、音の祈りが結晶化したような作品です。
タイトルが示すように「静けさ」「安らぎ」をキーワードにしつつも、ただリラクゼーションに流れるのではなく、精神の奥へと向かうダイナミズムが息づいています。
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アーティストについて
NOMAK(本名:中村憲明)は日本のトラックメイカー/ピアニストとして知られ、2000年代半ばからジャジー・ヒップホップ、ダウンテンポ、アンビエントの領域で世界的な評価を受けてきました。
Nujabes、Uyama Hirotoらと並び語られることが多いですが、NOMAKの音は「祈り」「精神性」「生命力」というテーマがより強調されており、静かな情緒と強い意志が同居しています。
鍵盤の美旋律、しなやかなビート、東洋的なモチーフ、そして微細な旋律のレイヤー。
これらが有機的に融け合い、聴く者の内側へ語りかける音楽世界を構築しているのがNOMAKの最大の魅力です。
アルバムの特徴・個性
『CALM』は、NOMAKが持つ精神性・叙情性・メロディアスな鍵盤表現を最も純度高く提示したアルバムです。すべての曲で、派手な展開よりも“内なる心の動き”が重視されており、メロウなジャズ感覚と、祈りにも似た旋律が穏やかに流れていきます。
アルバム全体は大きく3つの軸で構成されています。
1つ目は 「地球・自然・生命」を思わせる深いビートトラック、
2つ目は 「祈り」や「精神世界」をテーマにしたピアノ主体の楽曲、
3つ目は ジャジー&ヒップホップのNOMAKらしい律動を持つ楽曲 です。
アルバムではこの3つの軸が見事に交差し、まるで“静と動”“影と光”が交互に現れるような流れになっています。精神的な旅をするようなストーリーテリング性も自然に感じられる構成です。
『CALM』全曲レビュー
1. Anger Of The Earth
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特徴:深く沈むキックと土の匂いを思わせるような低音が、タイトルの“地球の怒り”を象徴している曲。環境問題や地球の変動を抽象化したような重厚さがあり、NOMAKらしいミニマルな旋律が徐々に姿を現す。怒りとともに、根底には「守りたい」という祈りの情緒が漂う。
2. Spiritual Home
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特徴:透明なパッドと繊細なベルの音色が、内的世界への玄関口を開くように響く楽曲。Spirit(精神)の帰る場所というテーマの通り、輪郭の柔らかい音がゆるやかに広がり、前曲の怒りを浄化するかのように漂う。
3. One Fist
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特徴:しっかりしたドラムループの上に、鋭いピアノリフが跳ねる。タイトルOne Fistの通り、「意思を握りしめる」ような固い決意を感じさせる曲。NOMAKのブラックミュージック的センスが最もわかりやすく現れたトラックで、都会的な空気感と強い生命力を同時に備えている。
4. Elemental Music
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ジャンル:アンビエント/ニュージャズ
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特徴:“元素の音楽”を意味するタイトルの通り、水・風・光を思わせる細やかなサウンドレイヤーが折り重なる曲。ピアノの旋律は短く反復し、そこにノイズ的なテクスチャが重なっていく。自然の動きと音が同化したような、立体的な響きが美しい。
5. Geishas In The Days
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特徴:和楽器を思わせる音色と、NOMAK特有のメロウネスが融合した名曲。日本的情緒をエレクトロニカの方法論で抽出し、古き良き美の佇まいを現代にアップデートしている。リズムは控えめだが、旋律の細部に“息遣い”が宿る。
6. Force For Truth
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ジャンル:ダウンテンポ
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特徴:NOMAKらしい「真実を探す」ような硬質のトーンが印象的。ドラムは太く、静かだが確信的な強さを持ち、そこにストリングスのようなシンセが入り、荘厳さを生む。アルバムの中で最も“戦いの精神”を感じる楽曲。
7. Diaphanous Air
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ジャンル:アンビエント
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特徴:diaphanous(半透明)の名の通り、指で触れられないほど繊細な質感の音が広がる。打楽器はほぼなく、空気の震えそのものが音楽になったような浮遊感を持つ。Meditation(瞑想)にも近い曲。
8. Hi, Mom! ~A Prayer For World Peace~
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特徴:タイトルが示す通り、母なる存在への呼びかけと平和の祈りを込めたトラック。ピアノ旋律は子どもが歌うようにやさしく、ビートは穏やか。アルバムの中でも最も“光”を感じる曲であり、救いに満ちている。
9. If I Was Peace
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ジャンル:ピアノ・アンビエント
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特徴:“もし自分が平和そのものだったら”という印象的なタイトルの通り、旋律が静かに寄せては返し、透明な水面の波紋のように広がる。言葉のいらないメッセージ性を持った美しい楽曲。
10. Ultimate Eternity
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特徴:永遠のイメージを音で描いた大気的な曲。NOMAKが得意とする持続音のレイヤーが多用され、終わりのない広がりを感じさせる。瞑想音楽としての側面が非常に強い1曲。
11. Blessing Dance
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ジャンル:ダウンテンポ/ワールドビート
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特徴:祭礼や祈りの儀式を思わせる、祝福のテンポを持つ楽曲。軽やかなパーカッションと柔らかいメロディが踊るように絡み、タイトル通り“祝福が踊るように降り注ぐ”印象を与える。
12. 1st Commandment is…
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特徴:1st Commandment(第一の戒律)という宗教的概念を扱った深い曲。低音の重さとピアノの硬質さが精神的な重厚感を生む。“戒律の声”のようなミニマルなシンセリフが印象的。
13. Time Of Reflect
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ジャンル:アンビエント/ジャズピアノ
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特徴:reflect(内省)の名にふさわしい、静かで深い曲。ジャズ寄りのピアノが中心にあり、思考が整理されていくような流れを持つ。アルバム後半の精神的ピークの1つ。
14. Sanctuary
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特徴:アルバムを締めくくる“聖域”というタイトル通り、心がそっと安らぐ空間が広がる。包み込むようなパッド、柔らかいピアノ、静かな余韻。『CALM』のテーマを最も端的に体現した楽曲で、精神の帰結点として美しい幕引きを迎える。
こんな人におすすめ!
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静謐でスピリチュアルな音楽が好きな人
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NujabesやUyama Hiroto系のメロウで叙情的なビートが好きな人
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作業用BGM以上の「精神の安定」を求める人
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日常から少し離れ、心をリセットしたい人
同じ系統の楽曲・アルバム 5選
1. Uyama Hiroto『A Son of the Sun』
ジャジーなビートとスピリチュアルなメロディが高い次元で融合した名盤。NOMAKと共鳴する“静かな生命力”が感じられる作品。
2. DJ Okawari『Mirror』
ピアノを主体にした美しい旋律とメロウなビートが特徴。NOMAKと同様に“心の奥を照らす音”が展開されるアルバム。
3. Emancipator 『Soon It Will Be Cold Enough』
ポスト・ダウンテンポの代表作。静寂と叙情が共存するサウンドは『CALM』とスピリットが近い作品。
4. Helios『Eingya』
アンビエントとアコースティックを柔らかく組み合わせた傑作。NOMAKの精神性と響き合う深い余韻を持つ。
5. Bonobo 『Dial M For Monkey』
ジャズ、ダウンテンポ、民族音楽が融合した名作。NOMAKの持つ“有機的な躍動”と親和性が高いアルバム。
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まとめ
NOMAK『CALM』は、心の奥にしずかに灯りをともすような“精神的音楽”です。その祈りのメッセージがより自然に伝わり、まるで1章ずつ物語を読むように心が動いていきます。
静けさの中にある力。柔らかいメロディの奥に潜む意思。そして、聴き終えたあとに残る深い安らぎ。
忙しい日常の中で“心の拠り所”を必要とする人にこそ、確かに届く作品です。
