雑食音楽遍歴

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Virtuart『Drumz, Bass & Double Cream』(1998)|90年代ゴア・トランスの深層を照らす幻の名盤

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出典:YouTube

1990年代後半のゴアトランス・シーンには、多くの作品が埋もれてしまったという事実があります。商業流通の限界、当時のネット環境の未発達、アーティスト自身の匿名性の高さ。そんななかで、Virtuart(ヴィルトゥアート)が1998年に残した『Drumz, Bass & Double Cream』は、いまもなおカルト的な存在として語り継がれています。

本作は、当時のフランスのゴア/サイケデリック・トランスのなかでも特に独創的なエッセンスを持ち、後進のアーティストたちに多大な影響を与えました。しかし、フルアルバムとして語られる機会は意外なほど少なく、その音楽的価値はもっと掘り下げられるべきものです。

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アーティストについて

Virtuart(Olivier Abitbol)は、90年代フランスのゴアトランスシーンを支えたアーティストのひとりです。

Filteria や Morphic Resonance など、後のネオゴア勢からも影響を公言される存在であり、メロディの織り込み方、アシッドラインの重ね方、“宇宙的トリップ感”の作り方が際立っていました。

また、Virtuart はソロ名義だけでなく Virtuart & Friends として多くのコラボレーション作品を残しており、シーンの中心にいながらも”影の立役者”的な役割を果たしました。

アルバムの特徴・個性

本作『Drumz, Bass & Double Cream』は、Virtuartのディスコグラフィの中でも最も特異な立ち位置にあります。

・フレンチ・ゴア特有のクリスタルな高音と多重アシッド

アシッドラインが複雑に折り重なり、まるで光の粒子が脳内を駆け抜けるような“クリスタル感”が特徴です。

・トライバルリズムとミルキーで滑らかな低音

タイトルどおり「Drumz」「Bass」が全面に押し出され、リズムへの感性が極めて豊かです。中域〜低域をミルキーにまとめ上げる質感は他のゴアアーティストにあまり見られず、本作の大きな個性といえます。

・クラシックなゴア構造ながら緻密で耳に優しい

ドライブ感とサイケデリック感は強いものの、耳の疲労が少なく、聴きやすいのが Virtuart の魅力。そのバランスが本作でも見事に発揮されています。

『Drumz, Bass & Double Cream』全曲レビュー

1. Aimez-vous la Jungle?

2. A Step in A#

  • ジャンル: ドラムンベースIDM要素

  • 特徴:ピッチ感の強いベースラインと、ジャズ的コードが揺れるテクスチュアが印象的。A#というキーを意識した音使いが明らかであり、コード進行に柔らかさと浮遊感が宿る。

3. Milko Milca

  • ジャンル: ゴアトランス × D’n’B

  • 特徴:サイケデリックなリフが絶えず波打つ、Virtuartらしい混血感の強い曲。高速ブレイクにゴア特有のアシッドラインが絡みつき、ジャンルの境界を曖昧にする。

4. Fantomas

  • ジャンル: テックステップ/暗黒系D’n’B

  • 特徴:スネアの鋭さが際立つ、当時隆盛していたテックステップの流れを感じさせるトラック。重心の低いベースが不穏に唸り、ミスト状のパッドが背後を覆う。

5. Crime of the Millenary

  • ジャンル: サイケデリックD’n’B

  • 特徴:“犯罪的”な捻れ方をしたアシッドラインが曲全体を支配する。打楽器の分離が良く、複数のブレイクを切り替えながら緊張と緩和を演出する構築力は圧巻。

6. Eliksir

  • ジャンル: IDMドラムンベース

  • 特徴:メロディの美しさが際立つ作品。水面に反射する光のようなパッドと柔らかいコード進行が、激しいブレイクと対照を成す。

7. E. Vaporetto

  • ジャンル: スモーキーD’n’B

  • 特徴:ミスト状のFX、薄暗いコード、ゆれるリード音が独特のムードを醸し出す。テンポは速いが、雰囲気は落ち着いていて、夜の都市の情景を思わせる。

8. La Double Souffle de la Gruyere

  • ジャンル: ダウンテンポ/D’n’Bクロスオーバー

  • 特徴:アルバムの締め括りとして、よりゆったりしたテンポと温かいメロディを採用した楽曲。ノスタルジックなコード感と、柔らかく崩れるようなブレイクが心地よい。

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こんな人におすすめ!

  • ゴアトランスとD’n’Bのハイブリッドが好きな人

  • テックステップ/初期D’n’Bの質感を愛する人

  • 暗いゴアではなく“明るくトリッピーな”作品を探している人

  • アシッドラインがうねり続ける音像が好みの人

  • フレンチゴアの美しいメロディが好きな人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

1. Ra『To Sirius』

美麗なメロディと透明感ある高音を特徴とする名盤。。ゴアの中でも“爽やかさ”を求めるリスナーに刺さる作品。

2. Blue Planet Corporation『A Blueprint for Survival』

フランスシーンを象徴するサイケデリックかつディープなサウンド。宇宙的な広がりと洗練された音像は、Virtuart のクリスタルなアプローチと親和性が高い。

3. Filteria『Sky Input』

ネオゴアの代表作であり、Virtuart の影響を非常に強く受けたメロディ構築を持つ。多重アシッドの奔流は本作と同系統であり、00年代以降の進化版とも言える位置付け。

4. Dimension 5『Transdimensional』

トランシーで浮遊感あるメロディが特徴のUKゴア名盤。硬質ではなく伸びやかなサウンドが、Virtuart の柔らかい音像とよく似た質感を持つ。

5. Electric Universe『One Love』

エネルギッシュながら温かみのあるアナログライクなアシッドが魅力の作品。スペーシーかつエモーショナルな構成が Virtuart と共通し、心地よいトリップ感を提供してくれる。

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まとめ

Virtuart『Drumz, Bass & Double Cream』は、フレンチ・ゴアの美学とアシッドの快楽性を凝縮した、まさに“1990年代の宝石”とも言える作品です。複雑な音の層を持ちながらも聴きやすく、初心者にも玄人にもおすすめできる稀有なアルバムです。音の透明度、光のようなアシッド、ミルキーな低音。そのどれもが唯一無二であり、いま聴いてもまったく古びることがありません。

もしあなたが“心地よくトリップできるゴア”を探しているなら、このアルバムは間違いなく外せません。