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John Scofield『A Go Go』(1998)|ジャズ・ファンクが到達した最高峰のグルーヴ

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出典:YouTube

1998年にリリースされたJohn Scofieldのアルバム『A Go Go』は、ジャズ・ギターの歴史において一つの転換点となった作品です。

彼は、伝統的なジャズのボキャブラリーと、ブルース、ファンクといったルーツ・ミュージックを融合させる独自のスタイルで知られていますが、このアルバムでは、当時のヒップホップやジャム・バンドのシーンで台頭していたMedeski, Martin & Woodをバックに迎え、徹底的にファンクとグルーヴを追求しました。

『A Go Go』は、複雑なコード進行や即興の妙技を重視する従来のジャズの枠から離れ、「リズムとアンサンブルの快感」を前面に押し出しています。このシンプルな構造が生み出す深遠なグルーヴは、ジャズファンだけでなく、ロックやファンクのリスナーをも魅了しました。

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アーティストについて

John Scofieldは1951年生まれのアメリカ人ギタリストで、モダン・ジャズ以降のギター表現を大きく更新してきた存在です。Miles Davis Bandへの参加をはじめ、ジャズ・フュージョン、ファンク、ブルース、ロックなど多様なフィールドで活動し、理論的でありながら極めてフィジカルな演奏を特徴としています。

90年代以降のScofieldは、ヒップホップやクラブ・カルチャーからの影響を積極的に取り込み、従来の「ジャズ・ギタリスト像」を解体するような作品群を発表しました。
『A Go Go』はその転換期を象徴する一作であり、彼のキャリアにおける最重要作のひとつです。

アルバムの特徴・個性

『A Go Go』の最大の特徴は、ソロやテクニックの誇示ではなく、徹底してグルーヴを中心に設計されている点です。
Medeski, Martin & Woodによるオーガニックでファンキーなリズムセクションと、Scofieldの粘度の高いギターが絡み合い、全編を通して身体的な快感が持続します。

また、本作はジャズでありながらクラブ・ミュージック以降の反復性やミニマル感覚を強く内包しており、ヒップホップ世代のリスナーにも開かれたサウンドになっています。結果として、『A Go Go』は「ジャズを聴く人のためのアルバム」ではなく、グルーヴを求めるすべての音楽ファンに向けた作品として成立しています。

『A Go Go』全曲レビュー

1. A Go Go

  • ジャンル:ファンク・ジャズ

  • 特徴: MMWとのコラボレーションの方向性を決定づけるファンク・グルーヴが炸裂する。粘り気のあるベースラインとタメの効いたドラムが強固な土台を作り、ブルージーなリフがその上を軽快に舞う。

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2. Chank

  • ジャンル:ソウル・ジャズ/ファンク

  • 特徴: 曲全体に漂うソウルフルな雰囲気と、ジョン・メデスキの粘っこいハモンドB-3オルガンの演奏が、楽曲を熱くドライブさせる。非常にシンプルな構造ながら、深いグルーヴを持つ。

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3. Boozer

  • ジャンル:ジャム・ファンク/ブルース

  • 特徴: ジャム・バンド的な即興性と、ダーティなブルースの雰囲気が混ざり合ったファンク・トラック。ギターは歪んだトーンで力強いブルース・フィーリングを前面に出し、MMWのリズム隊はそれをタイトにサポートする。

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4. Southern Pacific

  • ジャンル:ミディアム・ファンク/フュージョン

  • 特徴: 南部の列車を思わせるような、推進力のあるミディアム・グルーヴが特徴的な楽曲。John Scofieldの流麗なフレージングと、Medeskiのキーボードが、ジャズとフュージョンの要素を持ち込み、グルーヴの中にメロディの美しさを加えている。

5. Jeep On 35

  • ジャンル:ヘヴィ・ファンク

  • 特徴: アルバムの中でも特にヘヴィでブルージーなファンク・グルーヴを持つトラック。歪んだギター・トーンと、ドスの効いたMMWの演奏が、楽曲を荒々しくドライブさせる。

6. Kubrick

  • ジャンル:アンビエント・ジャズ/インストゥルメンタル

  • 特徴: 映画監督Stanley Kubrickに捧げられたかのような、SF的で冷徹なムードを持つトラック。実験的なサウンド・テクスチャと、John Medeskiのシンセサイザーが、アンビエントな空間を作り出す。

7. Green Tea

  • ジャンル:ジャズ・バラード/フュージョン

  • 特徴: 穏やかでメロディアスなジャズ・バラード。ファンクの熱狂から一転し、彼のジャズ・ギタリストとしての叙情性が際立つ。

8. Hottentot

  • ジャンル:アフロビート/ジャム・バンド

  • 特徴: アフロビートやFela Kutiを思わせる、反復的で催眠的なリズムが特徴的なトラック。MMWのリズム隊が織りなす複雑なポリリズムと、John Scofieldのエフェクティブなギター・サウンドが、聴き手を深いトランス状態へと誘う。

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9. Chicken Dog

  • ジャンル:ファンク・ブルース

  • 特徴: ダーティでユーモラスな雰囲気を持ちながら、徹底的にファンキーなグルーヴを持つ楽曲。ライブでの即興演奏が期待されるような、自由な構成を持つ。

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10. Deadzy

  • ジャンル:アウトロ/ダブ・ジャズ

  • 特徴: アルバムの終わりを静かに告げる、ダブ処理された浮遊感のあるトラック。ピアノやオルガンとギターが空間的な音響の中で絡み合い、このグルーヴの旅の余韻を残す。

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こんな人におすすめ!

  • ファンクやヒップホップからジャズに興味を持ち始めた人

  • ギタリストの音色や間の使い方を重視する人

  • 90年代のオルタナティブ・ジャズが好きな人

  • 踊れるジャズ、身体で感じる音楽を求めている人

  • ギターが「歌っている」ような、ブルージーでソウルフルな演奏を好む人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

1. Medeski, Martin & Wood『Combustication』

『A Go Go』の制作と同じ年に発表されたMMWのアルバムであり、彼らが追求するアコースティック・ファンクとエレクトリック・ジャズの融合が完成の域に達している。スコフィールドとのコラボレーションで得た経験がフィードバックされており、徹底的なグルーヴの追求という点で共通している。

2. Herbie Hancock『Head Hunters』

ジャズ・ピアニストのHerbie Hancockが、ファンクとアフロビートを取り入れ、フュージョンの金字塔を打ち立てた作品。ジャズ・ミュージシャンが伝統的な形式を脱ぎ捨て、グルーヴとリズムに焦点を当てたという点で、John Scofieldのファンク・ジャズの精神的なルーツの一つ。

3. The Meters『Rejuvenation』

ニューオーリンズ・ファンクのオリジネーターによる作品であり、泥臭く、徹底的にリズムに特化したグルーヴが特徴。John Scofieldのファンク・ジャズの根底にある、ブルースとファンクのルーツを理解する上で必聴のアルバム。

4. Soulive『Turn It Out』

90年代後半から2000年代初頭にかけて登場した、ハモンドB-3オルガンを中心としたファンク・ジャズ・バンドによるデビュー作。MMWの影響下にあり、タイトなリズムとオルガンのソウルフルな演奏が特徴的。

5. Miles Davis『On the Corner』

ファンク、インド音楽、アフロビートを融合させた実験的なエレクトリック・ジャズ作品。反復されるグルーヴと、ダブ的な音響処理は、後のJohn Scofieldのファンク・ジャズへのアプローチに決定的な影響を与えている。

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まとめ

John Scofieldの楽曲群、特にMMWとのコラボレーションは、彼がジャズ・ギターの巨匠として確固たる地位を築きながらも、新たなグルーヴとファンクの可能性を追求した、革新的な音楽的遺産です。

この作品群は、複雑な即興演奏よりも、原始的なリズムとグルーヴの快感を最優先しています。その結果、ジャズファンだけでなく、ファンク、ロック、ジャム・バンドのファンをも魅了する普遍的な魅力を獲得しました。

ジャズ入門としても、90年代音楽の重要作としても、間違いなく触れておくべき一枚です。