雑食音楽遍歴

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Lone『Emerald Fantasy Tracks』(2011)|多幸感溢れるネオ・レイヴ

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出典:YouTube

Loneの『Emerald Fantasy Tracks』は、幻想的なシンセとメロディに満ちたハウス/IDM作品として、クラブ・ミュージック好きの間で高い評価を得てきました。

本作はLoneのキャリアにおける大きな転換点であり、ダンスミュージックとアンビエントの中間を滑空するような音像が特徴です。ノスタルジックでドリーミーながら、クラブ現場でも確実に機能する強度を備えた本作は、10年以上経った今も古びない魅力を放ち続けています。

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アーティストについて

LoneことMatt Cutlerはイギリス・ノッティンガム出身のプロデューサーです。ヒップホップやIDM、アンビエントに強い影響を受けながらキャリアをスタートし、初期作ではメランコリックなサンプルの重ね合わせを特徴としていました。

2010年代に入るとよりパステルな質感のハウス〜レイヴ的なサウンドへとシフトし、R&Sからのリリースで世界的認知を獲得。以降、ダンスミュージックの領域で唯一無二の色彩感を示す存在となりました。

アルバムの特徴・個性

『Emerald Fantasy Tracks』は、Loneがフロア向けサウンドへと大きく舵を切ったターニングポイントとなる作品です。

  • 90年代レイヴ・ハウスの現代的再解釈

90年代初頭のUKハードコアやハウスが持っていたエネルギーを抽出しつつ、現代的なプロダクションで磨き上げています。懐かしさと新しさが同居する、タイムレスな魅力を持っています。

  • デトロイト・テクノ直系のコード感

Derrick MayやCarl Craigといったデトロイトの先人たちが紡いできた、美しくもどこか哀愁漂うハイテク・ソウルの精神が、Lone特有のきらびやかなサウンドの中に息づいています。

  •  「エメラルド」が象徴するヴィジュアルイメージ

アルバムタイトル通り、全編を通して「エメラルドグリーンの光」を想起させるような、瑞々しく透明感のある音響デザインが徹底されています。

『Emerald Fantasy Tracks』全曲レビュー

1. Cloud 909

  • ジャンル: ハウス / テクノ

  • 特徴: 太いキックドラムと、Loneの代名詞である煌びやかなシンセ・メロディが重なり合い、リスナーを一気に高度数千メートルの空中庭園へと運び去る。フロアを歓喜の渦に巻き込む、圧倒的な多幸感に満ちたオープナー。

2. Aquamarine

  • ジャンル: デトロイト・テクノ風ハウス

  • 特徴: 深海を揺らめく光のような、幻想的なシンセのレイヤーが美しい一曲。タイトルの通り、水の質感を感じさせる瑞々しいサウンドスケープが展開され、抑制の効いたビートがメロディの純度をより一層際立たせている。

3. Moon Beam Harp

  • ジャンル: アンビエント・ハウス / IDM

  • 特徴: 月明かりのように優しく、かつ鋭い光を感じさせるハープのようなアルペジオが特徴。万華鏡のように表情を変えていくシンセサイザーの波が、ダンスミュージックの枠を超えたリスニング体験をもたらす。

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4. Ultramarine

  • ジャンル: ピアノ・ハウス / レイヴ

  • 特徴: 90年代初頭のレイヴ・アンセムを彷彿とさせる、力強いピアノ・リフが主役のトラック。Loneらしい色彩豊かな和音構成が、古き良きハウスのフォーマットに新しい命を吹き込んでいる。

5. Re-Schooling

  • ジャンル: ブレイクビーツ / レイヴ

  • 特徴: 初期のヒップホップ的なルーツと、ハードコア・レイヴへの傾倒が交差する重要曲。ヨレたビート感と、どこかノスタルジックなサンプリング・センスが光り、Loneというアーティストの持つ知的な側面が強調されている。

6. Rissotowe 4

  • ジャンル: エレクトロニック・テクノ

  • 特徴: 緻密にプログラミングされたパーカッションと、浮遊感のあるシンセ・パッドが交錯する。アルバム中盤において、少しストイックで内省的なムードを作り出し、後半の叙情的な展開へとリスナーを誘導する。

7. Petrcane Beach Track

  • ジャンル: バレアリック・ハウス

  • 特徴: クロアチアのビーチで行われたフェスティバルの情景を音像化したかのような、極上の夕景トラック。波音と呼応するような柔らかなメロディが、パーティーの終わりと永遠の夏を感じさせる名曲。

8. The Birds Don’t Fly This High

  • ジャンル:ニューエイジ・エレクトロニカ

  • 特徴: 鳥のさえずりを模したようなシンセ音が、幻想的な夜が明けていく様子を描き出す。エメラルド色の幻想世界から、現実へと優しく着地させてくれる。

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こんな人におすすめ!

  • Boards of Canadaのようなノスタルジックなエレクトロニカが好きな人

  • 90年代のピアノ・ハウスやレイヴの多幸感を、今の感覚で味わいたい人

  • デトロイト・テクノの情緒的で美しいメロディラインを愛する人

  • 作業中に流せるクラブミュージックが欲しい人

  • ドライブや深夜のリスニングで、日常を鮮やかに彩りたい人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

1. Zomby『Where Were U in '92?』

90年代のレイヴ・カルチャーへのオマージュという点において、本作と対をなす重要作。よりストレートにハードコア・ジャングルやブレイクビーツをサンプリングしており、Loneが持つ「レイヴへの憧憬」をよりダークでハードな視点から体験できる。

2. Rustie『Glass Swords』

Loneと同じく2011年にリリースされた、エレクトロニック・ミュージックの金字塔。ネオンカラーの派手なシンセサウンドと、プログレッシブ・ロックやフュージョンの要素を飲み込んだ過剰なまでの多幸感は、『Emerald Fantasy Tracks』が持つ色彩美と共鳴する。

3. Floating Points『Shadows (EP)』

同時期のUKシーンにおいて、ジャズやソウルの素養をハウス・テクノに落とし込んだ傑作。コード進行の美しさや緻密な音響構築という点において、高い親和性を持つリスニング・ハウスの名品。

4. Bicep『Bicep』

90年代のハウス、イタロ・ディスコ、レイヴを現代的なプロダクションで蘇らせたデュオのデビュー作。Loneが切り拓いた「ノスタルジックなレイヴ・サウンドの現代化」という道を、よりスタジアム級のスケールへと押し広げたサウンドが楽しめる。

5. Legowelt『The Crystal Cult 2080』

ヴィンテージな機材を駆使し、独自のレトロ・フューチャーな世界観を構築するオランダの異才による一枚。デトロイト・テクノやシカゴ・ハウスへの深い愛情と、SF的な幻想風景を描き出すサウンドは間違いなく刺激的。

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まとめ

Loneの『Emerald Fantasy Tracks』は、リリースから10年以上が経過した今聴いても、全く色褪せることのない輝きを放っています。

それは、彼が単に過去のスタイルを模倣したのではなく、自身の記憶の中にある「最高に輝いていた瞬間の音楽」を、純度の高い幻想として結晶化させたからでしょう。このアルバムを開けば、いつでもそこにはエメラルド色のネオンが輝く、終わらないレイヴの夜が広がっています。

仕事に疲れた夜や、気持ちをポジティブに切り替えたい時、この作品はあなたに最高の色彩を届けてくれるはずです。