雑食音楽遍歴

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Ed Sheeran『No.6 Collaborations Project』(2019)|ジャンルの境界を破壊するポップ・アイコンの遊び場

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出典:YouTube

Ed Sheeranがデビュー前に自主制作していた『No.5 Collaborations Project』の続編として位置づけられた本作。しかし、そのスケール感は当時とは比較になりません。

Justin Bieber、Eminem、Bruno Mars、Chance The Rapper……。名前を挙げるだけで眩暈がするようなスターたちが、Ed Sheeranというハブを通じて一堂に会しています。本作の魅力は、これほど豪華なゲストを招きながらも、すべてが「Ed Sheeranの音楽」として成立しているその圧倒的なポップ・センスにあります。

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アーティストについて

Ed SheeranはUK出身のシンガーソングライターで、2010年代以降のポップシーンを代表する存在です。ギター一本の弾き語りから、ルーパーペダルを駆使したライブアレンジ、さらに“絶対に歌い負けない”キャッチーなメロディラインが世界を制しました。

『÷(Divide)』(2017)の大成功で名実ともにスタジアム級ポップスターとなり、続けて発表された本作では“コラボを通して世界のポップを射程に入れる”という挑戦が伺えます。

アルバムの特徴・個性

  • 圧巻のキャスティングと柔軟性

本作には総勢22名のアーティストが参加しています。各ゲストのスタイルに完璧に自分を合わせつつ、メロディの核となる部分では「Ed Sheeranらしさ」を失いません。彼のボーカリスト・ソングライターとしての柔軟性が極限まで発揮されています。

  • ヒップホップ・トラップへの深い傾倒

アルバム全体を通じて、現代のメインストリームであるヒップホップやトラップのビートが多用されています。アコースティックなイメージが強いエドですが、本作では彼のラップスキルやリズム感が前面に押し出されています。

  • 「何でもあり」の解放感

数学記号をタイトルに冠したオリジナルアルバム群とは異なり、プロジェクト的な位置づけであるため、実験的な試みが随所に見られます。Ed Sheeran自身が心から楽しみ、制約なく作り上げたことによる「風通しの良さ」がアルバム全体に漂っています。

『No.6 Collaborations Project』全曲レビュー

1. Beautiful People (feat. Khalid)

  • ジャンル: コンテンポラリー R&B / ポップ

  • 特徴: Khalidのシルキーな歌声とエドの優しいボーカルが見事に溶け合った、アルバムのオープニングを飾るに相応しい一曲。ミニマルなビートが心地よい。

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2. South of the Border (feat. Camila Cabello & Cardi B)

  • ジャンル: ラテン・ポップ

  • 特徴: Camila Cabelloの情熱的なボーカルと、Cardi Bのキレのあるラップが加わった、極めてトロピカルで官能的な楽曲。Ed Sheeranの奏でるスパニッシュ調のギターフレーズが、夏の夜のような熱っぽさを演出している。

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3. Cross Me (feat. Chance the Rapper & PnB Rock)

  • ジャンル: トラップ・ポップ / ダンス・ポップ

  • 特徴: 軽快なダンス・ビートに乗せて、愛する人を守る決意を歌う。Chance the Rapperの独創的なフローと、PnB Rockのキャッチーなフックが、Ed Sheeranのポップ・センスと高い次元で融合している。

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4. Take Me Back to London (feat. Stormzy)

  • ジャンル: UKグライム / ヒップホップ

  • 特徴: UKグライム界の重鎮ストームジーとの共演。自身のルーツであるイギリス・ロンドンのストリートへの愛を、タイトなラップで披露している。二人の親密な関係性が伝わる、アルバム中最も「硬派」なトラック。

5. Best Part of Me (feat. YEBBA)

  • ジャンル: アコースティック・バラード

  • 特徴: 一転して、Ed Sheeranの真骨頂であるアコースティックなラブソング。注目のシンガーYEBBAとのデュエットは、鳥肌が立つほど美しい。

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6. I Don't Care (with Justin Bieber)

  • ジャンル: ダンス・ポップ

  • 特徴: 世界的なスター二人が「パーティーは苦手だけど、君がいれば大丈夫」と歌うギャップが面白い。トロピカル・ハウス以降の軽快なビートは、本作を象徴する世界的大ヒットとなった。

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7. Antisocial (with Travis Scott)

  • ジャンル: トラップ / ヒップホップ

  • 特徴: Travis Scottを迎え、Ed Sheeranが最もダークで現代的なビートに挑戦した一曲。不穏なシンセサイザーと深いベース音が響く中、ボーカルも低音でソリッドに響く。

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8. Remember the Name (feat. Eminem & 50 Cent)

  • ジャンル: ヒップホップ

  • 特徴: ビートは2000年代のヒップホップへのオマージュを感じさせる。Ed Sheeranが彼らと肩を並べてラップを披露する様は、一人のファンとしての彼の夢が叶った瞬間を切り取ったかのよう。

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9. Feels (feat. Young Thug & J Hus)

  • ジャンル: アフロスイング / R&B

  • 特徴: Young Thugの中毒性のある声と、J HusのUKアフロ・ビート的な感性がミックスされた楽曲。複雑なリズム構成ながら、メロディが全体をポップにまとめ上げており、非常に洗練された印象を与える。

10. Put It All on Me (feat. Ella Mai)

  • ジャンル: R&B / ポップ

  • 特徴: Ella Maiのソウルフルな歌声が映える、心地よいミドルテンポのR&Bナンバー。二人の声の相性が抜群に良く、リラックスしたムードの中に確かな歌唱力が光る。

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11. Nothing on You (feat. Paulo Londra & Dave)

  • ジャンル: トラップ / ラテン・アーバン

  • 特徴: アルゼンチンのPaulo Londraと、UKのDaveという多国籍な布陣。夜の都会を感じさせるムーディーなビートの上で、異なる言語のラップが交錯する。

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12. I Don't Want Your Money (feat. H.E.R.)

  • ジャンル: ファンク / R&B

  • 特徴: H.E.R.を迎え、80年代ファンクを現代的に解釈したようなグルーヴィーな一曲。Ed Sheeranのファルセットと、H.E.R.の圧倒的なボーカル・スキルの応酬が聴きどころ。

13. 1000 Nights (feat. Meek Mill & A Boogie wit da Hoodie)

  • ジャンル: ヒップホップ / トラップ

  • 特徴: ツアー生活の喧騒と孤独を描いた内容。Meek Millの力強いラップと、A Boogie wit da Hoodieのメロディックなデリバリーが、Ed Sheeranの歌う切ないメロディを補強している。

14. Way to Break My Heart (feat. Skrillex)

  • ジャンル: エレクトロ・ポップ / ダブステップ

  • 特徴: Skrillexがプロデュースとして参加。彼の特徴である緻密なエディットが施されたビートと、Ed Sheeranの切ない歌声が融合。過剰な派手さを抑えつつ、現代的なエレクトロニック・サウンドとしての完成度を追求している。

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15. Blow (with Chris Stapleton & Bruno Mars)

  • ジャンル: ハード・ロック / ブルース・ロック

  • 特徴: アルバムの最後を飾るのは、まさかの激しいロック・ナンバー。ここまでのポップ/ヒップホップ路線を覆す衝撃のクロージング。

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こんな人におすすめ!

  • 2010年代後半のポップ・ミュージックの集大成を聴きたい人

  • メロディの強い歌モノが好きな人

  • ジャンルに縛られず、バラエティ豊かなプレイリストのようなアルバムを求めている人

  • ラテン/ヒップホップ/R&Bを横断的に聴く人

  • ドライブやホームパーティーで、誰もが楽しめる質の高いBGMを探している人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

1. DJ Khaled『Father of Asahd』 

コラボレーションの豪華さにおいて、本作と並び称される作品。多数のスターを適材適所に配置し、一つの大きなパーティーを作り上げる手法は、Ed Sheeranの本作におけるプロデューサー的視点と共通するものがある。

2. Justin Bieber『Changes』

Ed Sheeranとも共演したジャスティンが、R&Bやトラップ・ビートに深く傾倒したアルバム。ポップ・スターが自身のルーツであるブラック・ミュージックへ接近し、洗練された音像を作り上げる過程において、本作と高い親和性を持っている。

3. Post Malone『Hollywood's Bleeding』

ジャンルレスという点ではPost Maloneも外せない。ポップ、ラップ、ロックを自在に行き来し、すべての楽曲を特大のヒットに昇華させるその手腕は、本作でのEd Sheeranの挑戦的な姿勢と非常に近い。

4. Bruno Mars『24K Magic』

本作のラスト「Blow」でのロックンロールへの傾倒や、他の曲で見せるファンキーな要素を好むなら必聴。過去の良質な音楽を現代のポップスとして完璧に再生させる能力において、双璧をなす。

5. Stormzy『Heavy Is the Head』

「Take Me Back to London」でのEd Sheeranとの息の合った共演をさらに深掘りしたい方へ。UKグライムとポップスを融合させ、現代のイギリス音楽を象徴するサウンドを作り上げているこのアルバムは、本作の持つ「UKマインド」を体現している。

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まとめ

『No.6 Collaborations Project』は、“ポップスターの名刺”であると同時に、リスナーを世界中のシーンへ連れていくトラベルアルバムのような存在でもあります。音楽好きからライト層まで楽しめる間口の広さが魅力で、2019年前後のポップの多様性を俯瞰できる良作です。

全15曲、どこを切り取っても現代ポップ・ミュージックの「正解」が詰まっているこの一枚を、ぜひあなたのプレイリストに加えてみてください。