雑食音楽遍歴

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BCUC『Millions Of Us』(2023)|儀式とグルーヴが融合したアフロ・サイケデリックの傑作

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出典:YouTube

2020年代に入り、アフリカ発の音楽は単なる「ワールドミュージック」という枠を超え、グローバルな音楽シーンの中核へと躍り出ています。その中でも特に強烈な存在感を放っているのが、南アフリカのバンドBCUCです。

彼らの2023年作『Millions Of Us』は、集団の声、身体性、精神性をそのまま音として刻み込んだ“儀式的作品”です。伝統音楽、ファンク、パンク、スピリチュアル・ジャズが溶け合い、聴き手を深いトランス状態へと導きます。

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アーティストについて

BCUC(Bantu Continua Uhuru Consciousness)は、南アフリカ・ソウェト出身のバンドです。彼らの音楽は、西洋的なバンド形式でありながら、アフリカの伝統的なリズム、チャント、儀式的構造を強く保持しています。

ベース、パーカッション、ボーカルを中心とした編成で、ギターやシンセに依存しないサウンドは、身体そのものが楽器であるという思想を体現しています。

彼らのライブは集団的な精神体験として高く評価されており、そのエネルギーはスタジオ作品にも色濃く反映されています。

アルバムの特徴・個性

本作は、前作までの爆発的なエネルギーを維持しつつ、より洗練されたプロダクションと、今の世界に生きる人々への深い共感を込めた意欲作です。

  • 「声」が主役のポリフォニー
    リードボーカルのJovi Wu の咆哮、女性コーラスの美しさ、メンバー全員によるチャント。声だけで壁のような音圧を作り出しています。

  • 執拗な反復とトランス
    ミニマルなベースラインと打楽器のループが、聴き手を日常の意識から切り離し、祝祭的なトランス状態へと導きます。

  • より「歌」としての強度が増した構成
    過去作のような長尺のインプロヴィゼーションだけでなく、メロディアスなフレーズやキャッチーなフックが随所に光る仕上がりです。

  • 現代を生きる「私たち」へのメッセージ
    タイトル『Millions Of Us』が示す通り、南アフリカのローカルな視点を超え、分断が進む世界で共に生きる「何百万人もの私たち」への団結と希望の叫びが込められています。

『Millions Of Us』全曲レビュー

1. The Woods

  • ジャンル: アフロ・スピリチュアル / エクスペリメンタル

  • 特徴: アルバムの幕開けを飾る、静謐ながらも緊張感に満ちたトラック。タイトルが示す通り、深い森の奥へと足を踏み入れるような神秘的な音響工作が施されている。幾重にも重なるヴォーカルのレイヤーが、聴き手の意識を日常から切り離し、BCUCの深淵なる世界観へと誘う。

2. Thonga Lami - Cosmic LP Mix

  • ジャンル: サイケデリック・アフロビート / ダブ

  • 特徴: 「Cosmic」の名を冠したLPミックス版。地を這うような重厚なベースラインと、空間を切り裂くようなパーカッションが、ダブ的な音響処理によって無限の広がりを見せる。ヴォーカルの咆哮がエコーの中で増幅され、宇宙的なスケール感を感じさせる大曲。

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3. Ntuthwane - Extended Version

  • ジャンル: アフロ・パンク / トランス

  • 特徴: 執拗なまでの反復が生み出す熱狂の極致。エクステンデッド・バージョンならではの長い尺を活かし、リズムが徐々に、しかし確実に加熱していく。ポリリズムの迷宮の中で、メンバー全員が一体となって叫ぶチャントは、聴く者の原始的な本能を呼び覚ます。

4. Millions of Us - Part 1

  • ジャンル: アフロ・ソウル / コンシャス・ヒップホップ

  • 特徴: アルバムの表題を冠した三部作の序章。Jovi Wu の語りかけるようなラップと、美しい女性コーラスが対比される。南アフリカの過酷な現実を直視しつつも、そこに希望を見出そうとする「私たち」の物語が、ここから静かに動き出す。

5. Millions of Us - Part 2

  • ジャンル: アフロ・ロック / ポリティカル・チャント

  • 特徴: 三部作の中編。リズムがより攻撃的になり、メッセージの強度が一段と増す。社会的・政治的な不公正に対する怒りを、洗練されたリズムアンサンブルの中に閉じ込めた一曲。中盤から後半にかけてのヴォーカルの掛け合いは、もはや音楽を超えた演説のような力強さを持つ。

6. Millions of Us - Part 3

  • ジャンル: 祝祭的アフロ・スピリチュアル

  • 特徴: 物語を締めくくる最終章。激しい闘いの後に訪れる、カタルシスと祝祭感に満ちたトラック。これまでの楽曲の熱量を集約し、最後には大いなる肯定と団結へと向かう。聴き終えた後、圧倒的なエネルギーに満たされる、感動的な大団円。

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こんな人におすすめ!

  • 魂を揺さぶる生音を求めている人

  • アフリカ音楽やスピリチュアル・ジャズに興味がある人

  • サイケデリックな音楽体験を求めている人

  • 現代ジャズやワールドミュージックの新潮流を追っている人

  • トランス感のある音楽が好きな人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

  1. Fela Kuti『Expensive Shit』
    アフロビートの開祖であり、BCUCが最も敬意を払う存在。執拗なリズムの反復と、不正に対する怒りをエネルギーに変える姿勢は、まさにBCUCのルーツそのもの。

  2. The Brother Moves On『Tolika Mtoliki』
    同じ南アフリカのシーンで活動する盟友。ジャズ、ファンク、ロックを融合させた彼らのサウンドは、BCUCよりもメロディアスでありながら、根底にある「南アフリカのスピリチュアリティ」において深く繋がっている。

  3. KOKOKO!『Fongola』
    コンゴ民主共和国、キンシャサのバンド。廃材で作った自作楽器によるDIYなサウンドと、パンキッシュなエネルギーは、BCUCが提示する「現代アフリカのオルタナティブ」という文脈で対比して聴くべき傑作。

  4. Shabaka and the Ancestors『Wisdom of Elders』
    Shabaka Hutchings が南アフリカのミュージシャンと共に制作した作品。スピリチュアル・ジャズと南アフリカの伝統が交差する音像は、BCUCが持つ宇宙的な広がり(サイケデリア)を理解する上で最適な一枚。

  5. Goat『World Music』
    スウェーデンのサイケデリック・ロックバンド。世界各地の民族音楽を闇鍋のように煮込んだ彼らの音楽は、BCUCが到達した「トランス状態」をロックのフォーマットで体現しており、併せて聴くと非常に面白い。

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まとめ

BCUCの『Millions Of Us』は、単なる「ワールドミュージック」の枠に収まる作品ではありません。それは、私たちが忘れてしまった「声」と「リズム」という根源的な武器だけで、巨大な社会や分断に立ち向かうためのサウンドトラックです。

彼らの咆哮を聴き、そのリズムに身を任せたとき、あなたは自分の中にも「何百万人もの私たち」の一人としての力強い鼓動が流れていることに気づくでしょう。2023年という混迷の時代が生んだ、真にパワフルな音楽を、ぜひ全身で浴びてください。