雑食音楽遍歴

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DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『アイアンマウンテン報告』(2001)|踊れる前衛ジャズの極致

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出典:YouTube

2000年代初頭、日本のジャズシーンにおいて「事件」と呼ぶべき作品が登場しました。それが、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDENのアルバム『アイアンマウンテン報告』です。

圧倒的な音圧、極限まで研ぎ澄まされたグルーヴ、社会的・政治的コンセプトを内包した本作は、単なるジャズアルバムではありません。ジャズ、ロック、ファンク、ミニマルミュージック、ノイズが融合した、日本音楽史における重要な前衛作品です。

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アーティストについて

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(通称DC/PRG)は、サックス奏者・音楽家の菊地成孔を中心に結成された大編成ジャズプロジェクトです。

1999年に結成され、従来のジャズの枠を大きく逸脱したサウンドを展開しました。

彼らの音楽は「踊れる前衛音楽」とも呼ばれ、知性と肉体性の両方を刺激する独自のスタイルを確立しています。

アルバムの特徴・個性

本作は、21世紀の幕開けと共にリリースされた、DCPRGの美学が凝縮されたスタジオ・ファースト・アルバムです。

  • 静謐と轟音のコントラスト
    アルバム全体が「静」から「動」へ、あるいはその逆へと劇的に変化します。張り詰めた緊張感の後に訪れる、暴力的なまでのファンク・グルーヴは圧巻です。

  • 電子変調による音響工作
    生楽器の音はリアルタイムで電子的に変調(リング・モジュレーターなど)され、聴覚を揺さぶるサイケデリックな質感を獲得しています。

  • アフロ・フューチャリズムの日本的解釈
    Fela Kuti 的なアフロ・ビートの反復構造をベースにしつつ、東京という都市の冷徹さと熱量をミックスしたような、独自のサウンドスケープを構築しています。

  • 不穏なコンセプト
    タイトルの『アイアンマウンテン報告』は、架空の政府諮問委員会の報告書(戦争の必要性を説く偽書)から取られており、アルバム全体にどこか軍事的な、あるいは不穏な政治的緊張感が漂っています。

『アイアンマウンテン報告』全曲レビュー

1. CATCH 22

  • ジャンル: アヴァン・ファンク / エレクトリック・ジャズ

  • 特徴:重厚なベースラインと複数のパーカッションが織りなすポリリズムが、聴き手の三半規管を狂わせる。菊地のサックスが電子変調され、まるで悲鳴のように鳴り響く中、バンド全体が巨大な機械仕掛けの怪物のように進軍を開始する様は圧巻。

2. PLAYMATE AT HANOI

  • ジャンル: アフロ・ビート / ノイズ・ファンク

  • 特徴: 執拗なまでの反復。Fela Kuti の流れを汲むアフロ・ビートの構造を借りながらも、その手触りは極めて冷徹。トランペットやギターの断片的なフレーズが、リングモジュレーターによって金属的な響きへと変貌し、都市の雑踏のような喧騒と、呪術的なトランス状態を同時に創り出している。

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3. S

  • ジャンル: ミニマル・ファンク

  • 特徴: 短いタイトルが示す通り、ストイックに削ぎ落とされた構成が光る。執拗なドラムの連打と、不穏にたゆたうベース。徐々に音響の密度が上がっていく展開は、静かなる狂気が爆発する前夜のような緊張感をリスナーに強いる。

4. CIRCLE/LINE~HARD CORE PEACE

  • ジャンル: ポリリズム・ジャズ / プログレッシブ・ファンク

  • 特徴: DC/PRGの真骨頂とも言える楽曲。複数の拍子が同時に進行しながら、全体としては強烈なグルーヴを維持している。後半の「HARD CORE PEACE」への展開は、まさにカオスの中の秩序。数学的な美しさと肉体的な野蛮さが同居する、彼らのマニフェスト的な一曲。

5. HEY JOE

  • ジャンル: サイケデリック・ジャズ

  • 特徴: Jimi Hendrix 等で知られるスタンダードの解釈。原曲のブルース感覚は解体され、DCPRGというフィルターを通すことで、悪夢のような色彩を持ったサイケデリック・ジャズへと変貌を遂げている。予測不能なインプロヴィゼーションが聴き手を翻弄する。

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6. MIRROR BALLS

  • ジャンル: ダンス・ファンク / モダン・アフロ

  • 特徴: タイトルとは裏腹に、きらびやかなディスコとは対極にある、冷たく光るミラーボール。緻密に構成されたホーン・セクションと、破壊的なリズム隊が交差する。アルバムを締めくくるに相応しい、圧倒的な音圧と情報の奔流に飲み込まれる一曲。

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こんな人におすすめ!

  • エレクトリック・マイルス(『Bitches Brew』等)が好きな人

  • 実験音楽やポストロックを聴く人

  • 強烈なグルーヴを求める人

  • 踊れる前衛を探している人

  • フリージャズや前衛ジャズが好きな人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

  1. Miles Davis『Live-Evil』
    エレクトリック・マイルス期の金字塔。DCPRGが目指した「歪んだファンク」の原典である。破壊的なリズム隊と変調されたトランペットの応酬は、本作のDNAに色濃く受け継がれている。

  2. Fela Kuti『Expensive Shit』
    アフロ・ビートの始祖。反復するベースラインと強靭なホーン・セクションが作り出すトランス状態は、DCPRGの楽曲構造の基礎となっている。

  3. Herbie Hancock『Sextant』
    初期エレクトリック・ジャズの実験作。アナログ・シンセを大胆に取り入れた未来的で不穏な響きは、本作の持つ「SF的質感」と深く共鳴している。

  4. ROVO『PYRAMID』
    「ダンス・ミュージックを人力で再現する」バンドの代表作。DCPRGと同じく2000年代初頭の日本を席巻した。トランスへと誘うミニマリズムにおいて、両者はコインの裏表のような関係。

  5. Tortoise『TNT』
    シカゴ音響派の代表格。ジャズ、パンク、電子音楽を解体・再構築する手法において、DCPRGの持つ「エディット的な感性」と共通する知的興奮を味わえる。

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まとめ

DC/PRGの『アイアンマウンテン報告』は、20世紀にMiles Davis が蒔いた種が、21世紀の東京で突然変異を起こして開花した、異形のダンス・ミュージックです。

リリースから20年以上が経過した今もなお、この音塊から放たれる熱量と緊張感は微塵も衰えていません。むしろ、音楽が「消費」されやすくなった現代において、この「全神経の集中を強いる音の要塞」は、より一層その輝きを増しているように感じられます。一度足を踏み入れれば、あなたの音楽観は永遠に書き換えられてしまうことでしょう。