出典:YouTube
2000年代以降、ヴィンテージ・ソウルやファンクの再評価が進む中で、独自の存在感を放ってきたのがThe Budos Bandです。
2005年、名門Daptone Recordsから放たれた彼らのセルフタイトル・デビュー作は、当時のレトロ・ソウル界隈を震撼させました。洗練された都会のジャズではなく、砂埃と熱気、呪術的なリフレインが渦巻く唯一無二のグルーヴ。歌を排したインストゥルメンタル作品でありながら、その音は極めて雄弁。
重く、黒く、どこか危険な香りを放つグルーヴは、今なお多くのリスナーを惹きつけ続けています。
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アーティストについて
The Budos Bandは、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に結成されたインストゥルメンタル・バンドです。Daptone Records周辺のミュージシャンを中心に構成され、Sharon Jones & The Dap-KingsやAntibalasと同じ文脈で語られることも多い存在です。
彼らの音楽は、1960〜70年代のアフロビートやファンクを下敷きにしながらも、決してノスタルジーに留まりません。現代のヒップホップ世代にも通じる重低音と反復性が、The Budos Bandを唯一無二の存在にしています。
アルバムの特徴・個性
このデビュー作は、インストゥルメンタル・ファンクの概念を拡張しました。
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エチオ・ジャズの魔力
Mulatu Astatkeに代表される、エキゾチックでマイナー調のメロディラインが全編を支配しています。 -
重厚なホーン・ユニゾン
華やかなブラスではなく、地を這うようなバリトンサックスと力強いトランペットが一体となり、一つの「リフ」として襲いかかります。 -
ざらついたヴィンテージ・サウンド
Daptone特有のアナログ録音により、各楽器の音が歪み、混ざり合うことで、まるで数十年前の未発表音源を掘り起こしたような質感を生んでいます。 -
不変のループ
複雑なソロ回しよりも、中毒性の高いフレーズを執拗に反復。聴き手をトランス状態へと誘う構成が秀逸です。
『The Budos Band』全曲レビュー
1. Up From the South
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ジャンル: アフロ・ファンク
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特徴: アルバムの幕開けにふさわしい、重厚なホーンのリフが耳を奪う。タイトなドラムとパーカッションが刻むリズムの上を、うねるようなベースラインが走り抜ける。砂漠の地平線から巨大な軍団が迫ってくるような、圧倒的な導入部。
2. T.I.B.W.F.
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ジャンル: エチオ・ジャズ / ファンク
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特徴: マイナーコードの怪しげなメロディが炸裂する一曲。オルガンの細かなフレーズがアクセントとなり、60年代のエチオピアのナイトクラブに迷い込んだかのような錯覚を与える。抑制の効いたアンサンブルが、曲の持つ毒気を際立たせている。
3. Budos Theme
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ジャンル: ディープ・ファンク
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特徴: バンドの名を冠したテーマ曲。シンプルかつ強力なホーンのリフが、聴き手の脳内に直接刻み込まれる。余計な装飾を削ぎ落とし、リズムとメロディの骨格だけで勝負する彼らのアイデンティティが凝縮されたトラック。
4. Ghost Walk
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ジャンル: シネマティック・ファンク
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特徴: タイトル通り、幽霊が彷徨うような不穏な空気が漂う。マカロニ・ウェスタンのサントラをファンク化したような哀愁があり、バリトンサックスの深い低音が、深夜の街の静かな狂気を演出している。
5. Monkey See, Monkey Do
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ジャンル: パーティー・ファンク
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特徴: アルバムの中でも陽気さと荒々しさが同居した一曲。メンバー全員が楽しげに音を鳴らしている様子が目に浮かぶような、開放的なグルーヴが心地よい。中盤のパーカッションの抜きが、楽曲に程よい躍動感を与えている。
6. Sing a Simple Song
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ジャンル: ファンク
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特徴: Sly & the Family Stoneの名曲をカバー。原曲のファンキーさを保ちつつ、ブドス流の「泥臭さ」で完全に再構築。歌がないからこそ、ホーンセクションの咆哮がリリック以上に雄弁に響く。
7. Eastbound
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ジャンル: アフロ・ジャズ
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特徴: 東洋的なスケール(音階)を感じさせる、神秘的かつ催眠的な楽曲。繰り返されるリフが強い中毒性を生み出し、聴き手を異郷の地へとトリップさせる。アルバムの後半へ向けて緊張感を再燃させる重要なトラック。
8. Aynotchesh Yererfu
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ジャンル: エチオ・ジャズ
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特徴: Mulatu Astatkeの名曲をカバー。原曲への深い敬意を感じさせつつ、より現代的なダイナミズムを注入。怪しげな旋律と乾いたドラムの質感が、アルバムの中で最もエキゾチックな情景を描き出す。
9. King Charles
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ジャンル: デザート・ファンク
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特徴: 歪んだギターのカッティングが印象的な、攻撃的なナンバー。ドラムのキックが非常に重く、ロック的な力強さを感じさせる。バンドの「肉体性」が最もストレートに表現された楽曲の一つと言える。
10. The volcano Song
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ジャンル: エキゾチック・ファンク
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特徴: 噴火を待つ火山のような、静かな狂気を孕んだトラック。フルートのような音色やパーカッションの彩りが、アルバムの中で最もサイケデリックな表情を見せる。終盤に向けて徐々に熱を帯びていく展開が秀逸。
11. Across the Atlantic
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ジャンル: インストゥルメンタル・ソウル / エンディング
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特徴: アルバムの最後を締めくくる、壮大な旅の終着点。海を越えて音が伝わっていくような、どこかノスタルジックなメロディが胸を打つ。大団円にふさわしい、熱量の高いクロージング。
こんな人におすすめ!
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とにかく太いリズムに溺れたいファンク愛好家
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アフロビートやエチオ・ジャズの初心者
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ヒップホップのサンプリング・ソースを探している人
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タランティーノ映画のようなシネマティックな音が好きな人
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歌よりもグルーヴやリズムを重視する人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
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Mulatu Astatke『Ethio Jazz』
エチオ・ジャズの創始者による歴史的名盤。The Budos Bandが標榜する「怪しくも美しい」旋律の源流。ヴィンテージな録音の質感も含め、彼らの精神的支柱と言える作品。 -
Sharon Jones & The Dap-Kings『Naturally』
同じDaptoneの看板。ボーカル入りの正統派ソウルだが、バックを固める演奏陣のタイトなグルーヴと、アナログ録音へのこだわりは共通している。 -
Antibalas『Who Is This America?』
ブルックリンのアフロビート・オーケストラ。
Fela Kutiの精神を継承しつつ、現代的なエッジを加えたサウンドは、リズムの爆発力において双璧を成す。 -
Menahan Street Band『Make The Road By Walking』
The Budos Bandのメンバーも在籍するプロジェクト。よりシネマティックでソウルフル、哀愁とファンクネスが高度に融合したインスト・サウンドが楽しめる。 -
El Michels Affair『Enter The 37th Chamber』
Wu-Tang Clanをインスト・ファンクでカバー。The Budos Bandにも通じる「ざらついたシネマティックな質感」を追求しており、ヒップホップ世代にはたまらない音像である。
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まとめ
The Budos Bandのデビュー作は、リリースから時間が経った今も、全く古びていません。音楽がクリーンでデジタル化していく現代において、このアルバムが放つ「土の匂い」と「鉄の重み」は、より貴重なものに感じられます。
理屈ではなく、身体が反応するグルーヴ。スピーカーから溢れ出す熱気に身を任せて、彼らが作り出す漆黒のダンスフロアへ足を踏み入れてみてください。