出典:YouTube
2010年代初頭、EDMが世界的ムーブメントへと拡大する中で、若き才能として一躍脚光を浴びたのがPorter Robinson です。
2011年にリリースされた『Spitfire EP』は、彼の名を一気に世界へ広めた出世作であり、エレクトロ・ハウス/ブロステップ全盛期のエネルギーを凝縮した一枚です。
現在の彼が持つドリーミーでエモーショナルな作風とは真逆の、破壊的でアグレッシブなサウンドが詰め込まれた本作は、コンプレクストロやダブステップの金字塔として今なお語り継がれています。
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アーティストについて
Porter Robinson(ポーター・ロビンソン)は、アメリカ・ノースカロライナ州出身のプロデューサー/DJです。12歳から作曲を始め、オンラインコミュニティを通じてその才能を磨きました。
2010年にリリースした「Say My Name」で一躍注目を集め、弱冠18歳にしてSkrillex に見出されます。その後、Skrillex が立ち上げたレーベル「OWSLA」の第一弾リリースアーティストとして本作『Spitfire EP』を発表しました。
現在の彼は、日本のアニメ文化やJ-POPに強く影響を受けた『Worlds』や『Nurture』といったアルバムで知られ、非常にエモーショナルな物語を紡ぐアーティストとして君臨していますが、その原点は本作に宿る「圧倒的な編集能力と攻撃性」にあります。
EPの特徴・個性
2011年という年は、アメリカで「EDM」という言葉が爆発的に広まり、スクリレックスを筆頭にダブステップがメインストリームを席巻し始めた時期でした。その中でリリースされた『Spitfire EP』には、以下のような際立った個性があります。
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コンプレクストロ(Complextro)の極致
1小節の中に数十個の音色を詰め込み、パズルのように組み替える「コンプレクストロ」というジャンルを確立させた一枚。 -
初期衝動と緻密なプログラミング
若さゆえの荒々しいエネルギーがありながら、音の配置は極めて数学的で緻密。一瞬たりとも飽きさせない展開の速さが特徴。 -
メロディセンスの片鱗
攻撃的なワブルベースの裏で、Porter Robinson らしい美しいコード進行やキャッチーなメロディが随所に顔を覗かせています。
『Spitfire EP』全曲レビュー
1. Spitfire
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ジャンル: コンプレクストロ / エレクトロ・ハウス
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特徴: 冒頭のシネマティックな導入から一転、ドロップ(サビ)では暴力的なまでに刻まれたリードシンセが飛び跳ねる。音色が1音ごとに切り替わる緻密なシーケンスは、当時のリスナーに「次になにが起こるか予測不能」な衝撃を与えた。
2. Unison
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ジャンル: コンプレクストロ / ダッチ・ハウス
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特徴: 初期の代表曲として名高い一曲。高揚感を煽る美しいピアノの旋律から、一気に重厚なベース音へと叩き落とす緩急が見事。後の『Worlds』期にも通じるような、どこか切なさを孕んだメロディラインが攻撃的なリズムと共存しており、彼の作家性が強く表れている。
3. 100% In The Garbage
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ジャンル: ダブステップ / ドラムステップ
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特徴: Skrillex の影響を最もダイレクトに感じさせる、ハーフテンポのヘヴィな楽曲。メタル音楽のブレイクダウンを電子音で再現したかのような、破壊的なワブルベースが主役。ダークになりすぎず、どこかビデオゲーム的なビデオゲーム・ミュージックのような質感を持ち合わせている点がPorter Robinson らしい。
4. Vandalism (feat. Amba Shepherd)
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ジャンル: エレクトロ・ハウス
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特徴: Amba Shepherd のキャッチーなボーカルをフィーチャーした、本作の中で最もポップな構造を持つ楽曲。しかし、ドロップに入った瞬間にその期待は良い意味で裏切られ、グリッチの効いた複雑怪奇なシンセ・フレーズが暴れ回る。ボーカルのメロディックな要素と、インストパートの過激な編集力の対比が、後の「ポップスとエレクトロニカの融合」への布石となっている。
5. The State
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ジャンル: ダブステップ
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特徴: 自由論(リバタリアニズム)に関するナレーションをサンプリングした、メッセージ性の強い一曲。中盤のドロップは、地の底を這うような重低音と、硬質なスネアが強調されている。ミニマルな構成ながら、音の厚みと空間の使い方が巧み。
6. The Seconds (feat. Jano)
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ジャンル: コンプレクストロ
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特徴: 疾走感あふれるビートと、浮遊感のあるボーカルが絡み合う。ドロップでのシンセのキレ味は鋭く、ダンスフロアでの爆発力を極限まで高めた構成になっている。
7. Unison (Knife Party Remix)
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ジャンル: ブロステップ / エレクトロ・ハウス
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特徴: オリジナルの高揚感あるメロディを活かしつつ、ドロップでは彼らが得意とする「金切り声」のような鋭いシンセリードが炸裂する。当時のフェスティバル・シーンでかからない日はなかったと言われるほどの影響力を持ち、コンプレクストロとブロステップの架け橋となった歴史的なトラック。
8. Unison (Mikkas Remix)
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ジャンル: プログレッシブ・ハウス
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特徴: 本作の中で最も「美しさ」にフォーカスしたリミックス。攻撃的なエディットを抑え、エモーショナルなコード進行と疾走感のあるビルドアップで構成されている。
9. 100% In The Bitch (Downlink Remix)
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ジャンル: ダブステップ
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特徴: 極限まで削ぎ落とされたミニマルな構成ながら、一音一音の破壊力が凄まじく、脳を揺らすようなサブベースのうねりが特徴。オリジナルが持つゲーム的な質感を排し、よりダークでインダストリアルなフロア仕様へと変貌を遂げている。
10. The State (SKisM Remix)
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ジャンル: ダブステップ / ドラムステップ
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特徴: 原曲の政治的なナレーションを効果的に配置しながら、目まぐるしく変化するリズムパターンで聴き手を翻弄する。特に後半にかけてドラムステップへと加速していく展開は圧巻であり、ダブステップ全盛期のテクニカルな編集技術がこれでもかと詰め込まれている。
11. Spitfire (Kill The Noise Remix)
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ジャンル: ブロステップ
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特徴: オリジナルの緻密な構成をリスペクトしつつも、より「生々しく、有機的な」唸りを上げるベースサウンドへとアップデートされている。金属的な質感とグルーヴ感が同居しており、サウンドデザインの極致とも言えるクオリティを誇る。
こんな人におすすめ!
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初期EDM・ダブステップの熱狂を追体験したい人
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緻密な音響構築が好きな人
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攻撃的でエネルギッシュなクラブミュージックを求める人
- エレクトロ・ハウス全盛期のサウンドを体験したい人
- Porter Robinsonの原点を知りたい人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. Skrillex『Scary Monsters and Nice Sprites』
2010年代の音楽シーンを塗り替えたダブステップの聖典。エレクトロニカの緻密さとヘヴィメタルの攻撃性を同時に味わえる、歴史的必聴盤。
2. Zedd『Clarity』
コンプレクストロの旗手として頭角を現した時期の作品群。特に初期の「Slam The Door」などは、『Spitfire』に近い緻密なカットアップ手法が多用されている。
3. Wolfgang Gartner『Weekend in America』
コンプレクストロというジャンルの生みの親の一人とも言われるWolfgang Gartner の傑作。緻密なシンセ・ワークの教科書のような一枚。
4. Madeon『The City EP』
Porter Robinson の親友であり、共にシーンを牽引してきたMadeon の初期作。本作に比べるとファンキーでフレンチ・ハウス寄りの色彩が強いが、10代特有の瑞々しい才能と、圧倒的なエディット能力の高さという点では共通している。
5. Knife Party『100% No Modern Talking』
Pendulumのメンバーによって結成されたユニットによるデビュー作。本作同様、圧倒的な音圧と、聴く者をなぎ倒すような強烈なシンセサイザーが特徴。
この記事で紹介したEP
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まとめ
『Spitfire EP』は、Porter Robinsonの原点であり、EDM黄金期の象徴的作品です。荒々しく、若々しく、エネルギッシュ。それでいて、後の芸術性の片鱗も感じさせる重要作です。
今聴き返しても、その破壊力と熱量は色褪せません。
EDMの歴史を語るうえで欠かせない一枚として、ぜひ体感してみてください。