雑食音楽遍歴

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Chali 2na『Fish Outta Water』(2009)|低音ボイスが魅力のクラシック・ヒップホップ

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出典:YouTube

2000年代のヒップホップには、技巧派ラッパーのソロ作が数多く存在します。その中でも、圧倒的な低音ボイスとファンクネスなグルーヴで異彩を放つのが、Chali 2naのソロアルバム『Fish Outta Water』です。

グループ活動で培われたクラシックなヒップホップ精神と、ソウル・ファンク・レゲエまでを取り込んだ多彩なサウンドが融合した本作は、ヒップホップ好きはもちろん、ブラックミュージック好きにも強くおすすめできる一枚です。

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アーティストについて

Chali 2naは、アメリカ・ロサンゼルス出身のラッパーで、ヒップホップグループJurassic 5のメンバーとして広く知られています。

彼の最大の特徴は、“バリトンボイス”とも呼ばれる深く太い声質です。多くのラッパーが高速フロウやリリックの技巧で魅せる中、Chali 2naは声そのものが楽器のように機能するラッパーとして評価されています。

Jurassic 5ではクラシックなブーンバップスタイルを支え、ライブパフォーマンスでも高い評価を受けてきました。本作『Fish Outta Water』は、そんな彼が自分の音楽的ルーツを自由に表現したソロデビューアルバムです。

アルバムの特徴・個性

2009年にリリースされた本作『Fish Outta Water』には、Jurassic 5時代とは異なる、ソロならではの自由な魅力が詰まっています。

  • 「バリトン・ボイス」を活かしたサウンド
    重低音の効いた彼の歌声に合わせて、プロダクションもファンキーなベースラインや厚みのあるビートが強調されており、スピーカーから響く音圧が非常に心地よい設計になっています。

  • ポジティブで知的なリリック
    暴力やドラッグを賛美するのではない、自身の経験や家族、音楽への愛を語る「コンシャス(意識的)」なリリックは、大人のヒップホップ・ファンを唸らせる説得力があります。

  • ライブ感溢れるグルーヴ
    打ち込みと生音のブレンドが絶妙で、全編を通してフェスやクラブのフロアで鳴っているような、躍動感のあるサウンドに仕上がっています。

『Fish Outta Water』全曲レビュー

1. Get Focused

  • ジャンル: ヒップホップ

  • 特徴: 地を這うようなバリトン・ボイスが響き渡り、ソロ・アーティストとしてのChali 2na が再びマイクを握った高揚感を煽る。短くも、これから始まる広大な音の旅を予感させる重要なトラック。

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2. International (feat. Beenie Man)

  • ジャンル: ダンスホール・レゲエ / ヒップホップ

  • 特徴: 跳ねるようなリズムとチャリ・ツナの高速フローの相性は抜群で、国境を越えた音楽の繋がりを感じさせる。アルバム序盤にして、彼の「雑食性」が最大限に発揮された開放感溢れる一曲。

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3. So Crazy

  • ジャンル: ファンク・ロック / ヒップホップ

  • 特徴: 歪んだギターと太いベースラインが印象的な、エッジの効いたナンバー。自身の置かれた状況や世の中の狂騒を「Crazy」と一蹴するリリックが、パワフルなビートに乗せて叩きつけられる。

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4. Lock Shit Down (feat. Talib Kweli)

  • ジャンル: ブーバップ / アンダーグラウンド・ヒップホップ

  • 特徴: タイトなスネアと削ぎ落とされたサンプリングの上で、二人の実力派MCがスキルを競い合う。派手な装飾を排したからこそ、Chali 2na の声の「重み」がダイレクトに伝わってくる。

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5. Don’t Stop

  • ジャンル: パーティー・チューン / オールドスクール

  • 特徴: 初期のヒップホップへの敬意を感じさせる、ポジティブなバイブスに満ちた楽曲。ブラスセクションが華やかに鳴り響き、思わず体が動き出すようなファンキーなグルーヴが貫かれている。

6. Keep Goin’

  • ジャンル: コンシャス・ラップ

  • 特徴: 困難な状況にあっても前進し続ける意志を歌う、エモーショナルな一曲。ソウルフルなフックと、語りかけるようなラップのコントラストが美しい。Jurassic 5時代から変わらない、彼の誠実な人間性が音響として結実している。

7. Comin’ Thru

  • ジャンル: オルタナティブ・ヒップホップ

  • 特徴: 独特の譜割りとライミングが、緻密に構築されたビートの間を縫うように展開される。中毒性の高いリフが繰り返される中で、彼のバリトン・ボイスが楽器の一部のように馴染んでいる。

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8. F.O.W.

  • ジャンル: ハードコア・ヒップホップ

  • 特徴: アルバムタイトル『Fish Outta Water』の略称を冠した、ダークで重厚なトラック。ソロとして、一人の「戦うMC」としての牙を隠さない姿勢が見て取れる、ストレートにかっこいいヒップホップ・ナンバー。

9. Love’s Gonna Getcha

  • ジャンル: メロウ・ヒップホップ / R&Bエッセンス

  • 特徴: 愛の複雑さと力強さを描きつつ、メロディアスなフックが耳に残る。彼のラップが持つ「リズムの面白さ」が存分に発揮されており、テクニカルな面でも聴き応えがある。

10. Righteous Way

  • ジャンル: ネオ・ソウル / ヒップホップ

  • 特徴: スピリチュアルで温かみのある一曲。柔らかなキーボードの音色と、深い低音ボイスが完璧な調和を見せ、リスナーの心を穏やかに浄化していくような感覚を与える。

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11. When Will I See You Again

  • ジャンル: ラブ・バラード / ヒップホップ

  • 特徴: ヒップホップでありながら、ソウルミュージックのような深い情愛を感じさせる。彼の声が持つ「包容力」の部分が強く出ており、アルバムに深い奥行きを与えている。

12. Guns Up (feat. Damian Marley)

  • ジャンル: レゲエ・ヒップホップ

  • 特徴: 重厚なルーツ・レゲエのグルーヴと、Chali 2na の重低音が見事にシンクロし、圧倒的なパワーを放つ。社会への警鐘を鳴らしつつも、音楽的な心地よさを失わない、力強いアンセム。

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13. Graff Time

  • ジャンル: オールドスクール / ファンク

  • 特徴: 自身もグラフィティ・ライターである彼が、ルーツであるストリート・アートについて歌った一曲。スクラッチ音や街の喧騒を想起させるサウンドデザインが、リアリティを伝える。

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14. Controlled Coincidence (feat. Kanetic Source)

  • ジャンル: ジャズ・ヒップホップ

  • 特徴: 哀愁を帯びたホーンのフレーズが印象的な、ジャジーなトラック。夜の静寂の中に溶け込むような落ち着いたテンポで、大人の色気を感じさせるラップが展開される。

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15. 4 Be Be

  • ジャンル: アンダーグラウンド・ヒップホップ / スキル・ショーケース

  • 特徴: 言葉の響きやリズムを極限まで追求した、テクニカルな一曲。タイトなビートの上で、言葉を詰め込みながらも完璧にコントロールする様は圧巻。

16. What Dudes Do

  • ジャンル: ストリート・ヒップホップ

  • 特徴: 男たちの生き様やリアルな日常を、淡々と、しかし情熱的に描写する。最後の一音が消えるまで、Chali 2na という男の「誠実さ」と「音楽愛」が揺るがないことを証明する、見事な幕引き。

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こんな人におすすめ!

  • ジャンルレスに楽しめるヒップホップを探している人

  • 90年代ヒップホップが好きな人

  • ソウルやファンクを感じるヒップホップを聴きたい人 

  • ポジティブでエネルギー溢れる音楽に触れたい人

  • 声に個性のあるラッパーが好きな人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

1. Jurassic 5『Quality Control』

Chali 2na が在籍したグループの金字塔。4人のMCと2人のDJが織りなす完璧なアンサンブルは、本作のルーツそのもの。特に、古き良きヒップホップへの敬意と、誰もが楽しめるポピュラリティの両立という点において、このアルバムを避けて通ることはできない。

2. Damian "Jr. Gong" Marley『Welcome to Jamrock』

レゲエとヒップホップを高次元で融合させたそのサウンドプロダクションは、本作が目指した「ジャンルを越境するグルーヴ」と強く共鳴する。重厚なベースラインと社会的なメッセージという共通項も多い。

3. Blackalicious『Blazing Arrow』

巧みなフローとソウルやファンクを飲み込んだ緻密なトラックは、Chali 2na が追求する音楽性と非常に近い。ポジティブなエネルギーが横溢している点も、共通の魅力。

4. Ozomatli『Embrace the Chaos』

Chali 2na が以前在籍していた、ロスのミクスチャー・バンド。ヒップホップ、ラテン、ロック、ジャズを文字通り「混沌(カオス)」の中に溶け込ませた多国籍なサウンドは、彼がソロアルバムで見せた「雑食性」の源泉がどこにあるのかを雄弁に物語る名盤。

5. Lyrics Born『Later That Day...』

西海岸インディ・ヒップホップ・シーンの異才による一枚。ファンキーな生音使いと、どこかユーモラスでポジティブな空気感、独特なリズム感を持つラップスタイル。

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まとめ

『Fish Outta Water』は、Chali 2naの個性を最大限に発揮したソロデビューアルバムです。

ヒップホップを軸にしながらも、ソウル・ファンク・ジャズなど多彩な音楽要素を取り込み、声そのものがグルーヴを生み出す稀有な作品となっています。

クラシックヒップホップの魅力を再確認できる一枚であり、ブラックミュージック好きならぜひ一度は聴いてほしいアルバムです。深く響く低音ボイスと豊かなグルーヴを、ぜひじっくり味わってみてください。