出典:YouTube
1990年代後半は、エレクトロニックミュージックがクラブの枠を超え、アルバム作品として大きく評価され始めた時代でした。テクノ、ハウス、トリップホップ、アンビエントなどのジャンルが互いに影響を与えながら、独自のサウンドを持つアーティストが登場します。
その中でも独特の存在感を放っていたのが、アイスランドのエレクトロニック集団 GusGus です。彼らが1997年にリリースしたアルバム『Polydistortion』は、クラブミュージックのグルーヴとポップミュージックのメロディを融合させた、90年代エレクトロニカを代表する作品のひとつです。
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アーティストについて
GusGusは1995年、アイスランド・レイキャビクで結成されたエレクトロニック音楽グループです。
彼らはミュージシャン、DJ、映像作家、パフォーマーなどが参加するアートコレクティブとしてスタートしました。そのため、音楽だけでなく映像やファッションなども含めた総合的な表現を行うことが特徴です。
1990年代のヨーロッパではクラブカルチャーが急速に拡大していましたが、GusGusはその中でもポップ性のあるエレクトロニックミュージックで人気を集めました。テクノやハウスのビートにメロディアスなボーカルを重ねるスタイルは、当時としては非常に新鮮でした。
アルバムの特徴・個性
1997年に放たれた本作『Polydistortion』には、当時のエレクトロニック・ミュージックの枠には収まりきらない、以下のような際立った個性があります。
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「ポリ(多様な)」ディストーション
タイトルが示す通り、ジャンルの境界線をあえて歪ませ、融合させたハイブリッドなサウンドが特徴です。トリップ・ホップのダウナーな空気と、ダンス・フロアの熱狂が同居しています。 -
4ADレーベルの美学との融合
Cocteau Twins などが在籍した4ADらしい、耽美的で幻想的なアートワークや音響デザインが、GusGus の持つポップ・センスと見事に共鳴しています。 -
アナログの温かみとデジタルの冷徹さ
緻密なプログラミングによるビートの上に、生々しいストリングスやベースラインが重なり、立体的でオーガニックな音像を作り出しています。
『polydistortion』全曲レビュー
1. Oh -Edit
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ジャンル: トリップ・ホップ / ダウンテンポ
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特徴: 地を這うような重厚なベースラインと、執拗に繰り返されるサンプリング・ボイスが、聴き手をGusGus の迷宮へと誘う。中盤から加わるストリングスの旋律が、彼らの映画的な構成力を物語っている。
2. Gun
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ジャンル: エレクトロ・ファンク / アシッド・ハウス
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特徴: 中毒性の高いシンセ・ベースが楽曲を牽引する、本作屈指のアッパーなトラック。剥き出しの電子音が火花を散らすような、攻撃的な美しさが宿っている。
3. Believe
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ジャンル: ハウス / ソウル
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特徴: ハウス・ミュージックのフォーマットに、ソウルフルで包容力のあるボーカルが乗ることで、フロアだけでなくリビングルームでも機能する普遍性を獲得している。多幸感溢れるピアノのフレーズと、アイスランドの冷たい空気が奇跡的に調和している。
4. Polysterday
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ジャンル: シンセ・ポップ / エレクトロニカ
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特徴: 煌びやかなシンセサイザーのレイヤーと、少しノスタルジックなボーカルが重なり合う。タイトルが示すようなレトロな質感と、モダンなダンス・ビートのバランスが非常に心地よい。
5. Barry
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ジャンル: ダウンテンポ / ポップ
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特徴: アコースティックな響きを大切にしたトラックに、温かみのあるボーカルが寄り添う。実験的な音響が続く中で、この曲はまるで嵐の後の静かな夜明けのような安らぎを与えてくれる。
6. Cold Breath ’79
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ジャンル: エレクトロ・ファンク / アシッド・ハウス
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特徴: 粘り気のあるベースラインが特徴的で、ミニマルながらもグルーヴの推進力が凄まじい。GusGus の持つ「実験的でありながら踊れる」という美学が、この曲に凝縮されている。
7. Why?
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ジャンル: ユーロ・ポップ / シンセ・ポップ
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特徴: 80年代のNew Order を彷彿とさせるような、キャッチーで少し切ないメロディが印象的。ミニマルなビートの上で展開される男女ボーカルの掛け合いは、甘美でありながらもどこか虚無感を漂わせており、大人のポップ・ミュージックとしての完成度を誇っている。
8. Remembrance
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ジャンル: アブストラクト・ヒップホップ / ダブ
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特徴: ゆったりとしたビートに深い残響がかけられた、極めて内省的な楽曲。霧の中に消えていくような音像は、まさに「記憶(Remembrance)」の断片を繋ぎ合わせているかのよう。背後で鳴り響くホーンのような音が、微かなノスタルジーを刺激する。
9. Is Jesus Your Pal?
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ジャンル: オルタナティブ・エレクトロニカ
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特徴: 衝撃的なタイトルとともに放たれる、ダウナーでサイケデリックな一曲。繰り返されるフレーズが呪術的な雰囲気を醸し出し、聴き手を深いトランス状態へと誘う。
10. Purple
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ジャンル: プログレッシブ・ハウス
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特徴: 徐々に熱を帯びていくビートと、多層的に重なるシンセサイザーのレイヤーが圧巻。後半にかけての盛り上がりは、当時のアンダーワールドなどにも通じる「踊りながら泣ける」カタルーニュに満ちている。
11. Polyeprise
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ジャンル: アンビエント / サウンドスケープ
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特徴: 断片的な音のコラージュが、まるで映画のエンドロールのように静かに流れていく。このアルバムというカオスな旅を、最後は静寂へと導く見事な幕引き。
こんな人におすすめ!
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トリップホップやダウンテンポをよく聴く人
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夜に聴ける電子音楽を探している人
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90年代エレクトロニカが好きな人
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4ADレーベル特有の耽美的な世界観に惹かれる人
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ジャンルレスなミクスチャー感覚を愛する人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. Massive Attack『Mezzanine』
トリップ・ホップをよりダークでヘヴィなロック的質感へと昇華させた金字塔。GusGus が持つ「夜の深淵」や「重厚なベースライン」へのこだわりは、このアルバムが提示した美学と深く共鳴している。
2. Underworld『Second Toughest in the Infants』
90年代のダンス・ミュージックを芸術の域まで高めた傑作。長い時間をかけて高揚感を構築していく構成や、ボーカルを楽器の一部として扱う手法など、GusGus の「Purple」などに通じるカタルシスを味わえる。
3. Björk『Post』
同じアイスランドの同胞による、ジャンル横断的なポップ・アルバムの最高峰。エレクトロニクスを駆使しながらも、強烈な個性と歌の力でポップ・ミュージックとして成立させるバランス感覚は、GusGus の目指した方向性と非常に近い。
4. Lamb『Lamb』
ジャズ、トリップ・ホップ、ドラムンベースを融合させたデュオのデビュー作。繊細な女性ボーカルと攻撃的なビートの対比は、GusGus が本作で見せた「静と動」のコントラストを愛するリスナーに間違いなく刺さるはず。
5. Moloko『Do You Like My Tight Sweater?』
後のRóisín Murphy を擁するユニットのデビュー作。トリップ・ホップ的なアプローチにファンクやユーモアを注入したスタイルは、GusGus が持つ「クールなだけではない、雑食的な遊び心」と共通の魅力を放っている。
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まとめ
『Polydistortion』は、90年代エレクトロニックミュージックの魅力を凝縮したアルバムです。
テクノやハウスのクラブサウンドをベースにしながら、トリップホップやポップの要素を取り入れた音楽性は、現在聴いても非常に新鮮です。
GusGusの独特な世界観と都会的なサウンドは、電子音楽の名盤として今でも多くのリスナーに愛されています。エレクトロニカが好きな方はもちろん、90年代の音楽シーンに興味がある方にもぜひ聴いてほしい一枚です。