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Talking Heads『Remain in Light』(1980)|アフロ・ビート×ポスト・パンクの革命的名盤

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出典:YouTube

1980年、ロック音楽の歴史に「点」ではなく「線」を引いた衝撃作が誕生しました。Talking Headsトーキング・ヘッズ)が発表した4枚目のアルバム『Remain in Light』です。

アフリカ音楽の複雑なポリリズムと、NYの最先端ニュー・ウェイヴ、Brian Eno による革新的なスタジオ・プロダクションが融合した本作は、リリースから40年以上経った今なお、全く古びることのない未来の音楽として響き続けています。

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アーティストについて

Talking Heads は、1974年にDavid Byrne、Chris Frantz、Tina Weymouthによって結成(後にJerry Harrison が加入)された、NYパンク/ニュー・ウェイヴを代表するバンドです。

名門美大ロードアイランド・スクール・オブ・デザインの学生だった彼らは、インテリジェンスとアート感覚を武器に、無機質なパンク・ロックからスタートしました。しかし、プロデューサーのBrian Eno との出会いにより、そのサウンドは次第に実験的、かつ呪術的なファンクネスを帯びるようになります。

David Byrne の神経症的でいて情熱的なボーカルと、それを支える強靭なリズム・セクション。彼らは単なる「ロックバンド」の枠を壊し、世界中の音楽を飲み込む巨大な音の実験体へと進化していったのです。

アルバムの特徴・個性

1980年にリリースされた『Remain in Light』は、バンドとBrian Eno のコラボレーションの頂点であり、当時のロック界において最も急進的なアプローチが取られた作品です。

  • アフロ・ビーツの全面的な導入
    Fela Kuti に代表されるアフロ・ビーツを徹底的に研究し、ロックのフォーマットに移植。単一のコードの上で執拗に繰り返されるファンク・グルーヴが、トランス状態を誘発します。

  • 集団即興演奏とスタジオ・エディット
    メンバー個人のエゴを排し、ジャム・セッションから生まれた断片をテープ・ループのように再構築。個々のパートはシンプルながら、それが重なることで極めて複雑な「音の層」を作り出しています。

  • 「光の中に留まる」という逆説
    不穏で呪術的なサウンドでありながら、タイトルには「Light」という言葉が冠されています。情報の過多、都市の焦燥、その先にある一種の悟りのような感覚が同居しています。

『Remain in Light』全曲レビュー

1. Born Under Punches (The Heat Goes On)

  • ジャンル: アフロ・ファンク / ニュー・ウェイヴ

  • 特徴: アルバムの幕開けを飾る、呪術的なポリリズムが炸裂する一曲。うねるようなTina Weymouth のベースラインと、Adrian Belew による動物の咆哮のようなギター・ノイズが、聴き手を一瞬で熱狂的なトランス状態へと引きずり込む。

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2. Crosseyed and Painless

  • ジャンル: ポスト・パンク / ダンス・パンク

  • 特徴: David Byrne の早口で神経症的なボーカルが、高速でタイトなファンク・ビートの上を滑走する。事実(Facts)が信じられなくなる現代社会の混乱を歌った歌詞は、今の時代にこそより深く突き刺さる。

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3. The Great Curve

  • ジャンル: アフロ・ポップ / エクスペリメンタル・ロック

  • 特徴: 幾重にも重なる重層的なコーラス・ワークと、アフリカの民族音楽のような熱狂的なグルーヴが融合している。中盤と終盤に登場するAdrian Belew のギターソロは、もはや楽器の限界を超えたノイズの奔流であり、聴く者の理性を完全に破壊する破壊力を持っている。

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4. Once in a Lifetime

  • ジャンル: アート・ロック / シンセ・ポップ

  • 特徴: 浮遊感のあるシンセ・パッドと、水が流れるような瑞々しいリズムが心地よいが、その背後には「自分はなぜここにいるのか?」というアイデンティティへの深い問いが隠されている。ポップさと不気味さが完璧なバランスで共存する傑作。

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5. Houses in Motion

  • ジャンル: ファンク / アンビエント

  • 特徴: Jon Hassell のトランペットが、中東やアフリカを思わせるエキゾチックで幻惑的な色彩を楽曲に添えている。一歩一歩踏みしめるような重厚なリズムが、視覚的なイメージを喚起するシネマティックな一曲。

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6. Seen and Not Seen

  • ジャンル: スポークン・ワード / 電子音楽

  • 特徴: 歌うのではなく、淡々と物語を読み上げるスポークン・ワード形式の楽曲。Brian Eno の音響工作が最も顕著に現れた、シュールで静かな恐怖を感じさせるトラック。

7. Listening Wind

  • ジャンル: 第四世界音楽 / エスノ・アンビエント

  • 特徴: 植民地化された土地の男が、爆弾を仕掛けて風の音を聞くという、極めて政治的で緊迫感のある歌詞を持っている。しかし、サウンド自体は極めて静謐で、Brian Eno とJon Hassell が提唱した「第四世界(Fourth World)」を体現するような、エキゾチックで美しいアンビエント・サウンドに仕上がっている。

8. The Overload

  • ジャンル: インダストリアル / ダーク・アンビエント

  • 特徴: アルバムの最後を締めくくるのは、Joy Division へのオマージュとも言われる、重苦しく引きずるような楽曲。それまでの躍動的なポリリズムは影を潜め、鉄が擦れるようなノイズと絶望的なドローンが支配する。光(Light)の中に留まった果てに見えるのが、この虚無的な闇であるという結末が、本作の深淵さを物語っている。

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こんな人におすすめ!

  • ロックの枠を超えた革新的な名盤を探している人

  • アフロ・ビーツやファンクとロックの融合に興味がある人

  • Brian Eno のプロデュースワークが好きな人

  • ポスト・パンクやニュー・ウェイヴの歴史的名盤を網羅したい人

  • 踊れるけれど、知的な音楽を求めている人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

1. Fela Kuti『Expensive Shit』

Talking Heads が本作を作る上で最大のインスピレーションとしたアフロ・ビーツの創始者。本作のポリリズムの源流を知る上で必聴の一枚であり、ワンコードでどこまでも高まっていくエネルギーは共通している。

2. Brian Eno & David Byrne『My Life in the Bush of Ghosts』

本作とほぼ同時期に制作された、Brian Eno とDavid Byrne の共同プロジェクト。ラジオの音や詠唱をサンプリングして構築されたサウンドは、本作の実験的な側面をさらに過激に推し進めたような内容。

3. Peter Gabriel『Peter Gabriel 3 (Melt)』

同じくBrian Eno 周辺の刺激を受け、ワールド・ミュージックとロックを融合させた名盤。スネアの響きを遮断した「ゲート・リバーブ」の導入など、音響工作に対する執着心において本作と強く共鳴する。

4. 坂本龍一『B-2 Unit』

1980年にリリースされたダブとエレクトロニカの実験作。本作『Remain in Light』と同様に、それまでの自身の音楽性を解体し、リズムの断片を再構築するストイックな姿勢において共通点が多い。

5. LCD Soundsystem『Sound of Silver』

2000年代以降のダンス・パンク・シーンを牽引したJames Murphy による傑作。Talking Heads が発明した「知的なダンス・ミュージック」の遺伝子を最も正しく受け継ぎ、現代的にアップデートしている。

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まとめ

『Remain in Light』は、単なるアルバムの枠を超えた「革命」でした。

西洋的なロックの構造を、アフリカのポリリズムとデジタルのエディット感覚で解体・再構築したその手法は、後のダンス・ミュージックやオルタナティブ・ロックのあり方を決定づけました。

初めて聴く方は少し難解に感じるかもしれませんが、繰り返し聴くことでその奥深さに気づくはずです。音楽の新しい扉を開きたい方には、ぜひ一度じっくり向き合ってほしい作品です。