出典:YouTube
Yesの『90125』は、プログレッシブ・ロックの代表格である彼らが、大胆な方向転換を果たした重要作です。1983年にリリースされた本作は、従来の長尺・複雑な構成から一転し、コンパクトで洗練されたポップ/ロックサウンドへと進化しています。
その象徴が、全米No.1ヒットとなった「Owner of a Lonely Heart」。MTV時代の到来とともに、Yesは新たなリスナー層を獲得しました。
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アーティストについて
Yes は、1968年にロンドンで結成されたイギリスを代表するロックバンドです。高い演奏技術を駆使した複雑な楽曲構成、Jon Anderson の透明感あふれるハイトーン・ヴォーカル、幻想的な歌詞世界で「プログレ5大バンド」の一つに数えられます。
しかし、70年代末にメンバーチェンジが相次ぎ、バンドは一時解散状態に陥りました。
本作では、新加入のギタリストTrevor Rabin のモダンな感性と、元メンバーであるTrevor Horn による革新的なプロデュースが化学反応を起こしました。結果として『90125』は、Yesの中でも最も商業的成功を収めた作品となります。
アルバムの特徴・個性
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Trevor Horn の魔術:
当時最新のサンプリング・マシン「フェアライトCMI」を駆使した、パルス感あふれる音響工作が最大の特徴です。 -
Trevor Rabin のポップ・センス
従来のイエスにはなかった、ハードロック的でキャッチーなリフとメロディが導入されました。 -
圧倒的なクリア・サウンド
音の分離が非常に良く、一つ一つの楽器の粒立ちが際立っています。これは現代のハイレゾ環境で聴いても驚くべきクオリティです。
『90125』全曲レビュー
1. Owner of a Lonely Heart(ロンリー・ハート)
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ジャンル:ニューウェイヴ / ポップ・ロック
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特徴:全米1位を記録した80年代の象徴。冒頭のドラムサウンドとオーケストラ・ヒットのサンプリングは、当時のリスナーに計り知れない衝撃を与えた。鋭利なリフとJon Anderson の歌声が見事に融合した一曲。
2. Hold On
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ジャンル:アリーナ・ロック / ハード・ロック
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特徴:骨太なギターワークが牽引するミドルテンポの楽曲。サビで見せる分厚いコーラスはYes の真骨頂であり、洗練された都会的な響きとロックの躍動感が共存している。
3. It Can Happen
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ジャンル:プログレッシブ・ポップ
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特徴:シタールのような音色から始まる実験的なトラック。Chris Squire のうねるベースラインが楽曲を支え、中盤ではかつてのプログレ的な構築美も顔を覗かせる。
4. Changes
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ジャンル:テクニカル・ロック
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特徴:変拍子を駆使したイントロが印象的な楽曲。Trevor Rabin とジョン・アンダーソンがヴォーカルを分担するドラマチックな構成で、人間の心境の変化を鮮やかに描き出している。
5. Cinema
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ジャンル:インストゥルメンタル
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特徴:わずか2分強ながらグラミー賞を受賞した名演。Alan White の力強いドラミングとテクニカルなギターが火花を散らす、新生Yes のエネルギーが凝縮された一曲。
6. Leave It
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ジャンル:ア・カペラ / アート・ロック
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特徴:メンバーの声をサンプリングして構築した実験作。驚異的な多重録音コーラスとデジタル編集の融合は、当時のポップス界においてあまりに先鋭的であり、彼らの実力を証明した。
7. Our Song
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ジャンル:アップテンポ・ポップ
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特徴:Tony Kaye の煌びやかなシンセサイザーが疾走するキャッチーな楽曲。Jon Anderson の伸びやかなヴォーカルが、自由と高揚感を歌い上げるポジティブなエネルギーに満ちている。
8. City of Love
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ジャンル:ハード・ロック
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特徴:重々しいリフと深いドラムサウンドが支配するダークなナンバー。都会の冷徹な空気感を演出するような、Trevor Horn 得意の「音の壁」を感じさせる重厚なプロダクションが特徴。
9. Hearts
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ジャンル:シンフォニック・バラード
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特徴:東洋的な旋律から始まり、壮大なスケールへと展開する。かつての神秘性と80年代の洗練が完璧な均衡を保つ、新生Yes の到達点と言える。
10. Leave It Single Remix
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ジャンル:80s エレクトロ・ポップ
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特徴:オリジナルのア・カペラ的要素を活かしつつ、ダンスフロアを意識したビートを強調したミックス。Trevor Horn による当時のリミックス文化の最先端を行く仕上がり。
11. Make It Easy
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ジャンル:ハード・ロック
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特徴:アルバム制作前の「シネマ」時代から存在した楽曲。Trevor Rabin のパワフルなギターが全開で、後の「ロンリー・ハート」へと繋がるバンドの勢いを感じさせる。
12. It Can Happen Cinema Version
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ジャンル:プログレッシブ・ロック
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特徴:Jon Anderson が合流する前の、Trevor Rabin がヴォーカルを務める初期バージョン。よりダイレクトなロックサウンドが強調されており、楽曲の原型を辿る上で非常に興味深い。
13. It’s Over Previously Unissued
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ジャンル:ポップ・ロック
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特徴:アルバム本編には未収録となった貴重な蔵出し音源。軽快なリズムと親しみやすいメロディを持っており、当時の彼らの創作意欲がどれほど旺盛であったかを物語っている。
14. Owner of a Lonely Heart Extended Remix
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ジャンル:ダンス・ミックス
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特徴:12インチシングル用に引き延ばされたロングバージョン。サンプリングやエディットの手法がさらに過激になっており、リスニングだけでなくフロアを意識した音響工作を堪能できる。
15. Leave It A Capella
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ジャンル:ヴォーカル・アンサンブル
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特徴:全ての楽器を排除し、メンバーの声だけで構成されたピュアなバージョン。Yes のコーラス・ワークがいかに精密で、かつ複雑に組み立てられていたかが手に取るように分かる圧巻の仕上がり。
こんな人におすすめ!
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80年代ポップ/ロックが好きな人
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キャッチーで完成度の高いアルバムを探している人
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良質なコーラス・ワークを重視する人
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プログレッシブ・ロックに興味がある人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
- Asia『Asia』(詠時感〜時へのロマン〜)
プログレの技術力とポップなメロディを融合させた、80年代プログレ・ポップの決定盤。徹底的にコンパクトかつドラマチックに構成された楽曲群は、本作と並ぶ時代の象徴。 - Art of Noise『Who's Afraid of the Art of Noise?』
プロデューサーのTrevor Horn が主宰したユニット。本作で実験されたサンプリング手法をさらに過激に突き詰めたインスト作品。 - Trevor Rabin『Can't Look Away』
ギター・オーケストレーションとポップ・センスが全開。まさに「イエス不在のイエス・サウンド」と呼ぶに相応しいクオリティを誇る。 - The Buggles『The Age of Plastic』(ラジオ・スターの悲劇)
Trevor Horn 自身のユニット。テクノロジーへの憧憬をポップに昇華したサウンドは、『90125』へと至る音響革命のプロトタイプとしての側面を持っている。 - Peter Gabriel『So』
音響美とヒット性を両立させた80年代の最高傑作。ワールドミュージック的なアプローチと最新テクノロジーの融合、圧倒的な音の粒立ちは、本作と双璧をなす美しさ。
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まとめ
『90125』は、Yesの歴史における大きな転換点であり、同時に80年代ロックの重要作でもあります。
プログレッシブ・ロックの枠を超え、ポップミュージックとしても高い完成度を持つ本作は、時代を越えて多くのリスナーに響く作品です。
初めてYesを聴く人にもおすすめできる、入口として最適な一枚と言えるでしょう。