雑食音楽遍歴

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Amon Tobin『Permutation』(1998)|ジャズ×ドラムンベースの進化形

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出典:YouTube

90年代後半、エレクトロニック・ミュージックの定義を根底から覆した一人の天才がいました。その名はAmon Tobin(アモン・トビン)。

彼が1998年に発表した3rdアルバム『Permutation』は、ジャズの即興性とジャングルの疾走感、シネマティックな音響工作が究極の次元で融合した、まさに音の万華鏡です。

単なるクラブミュージックの枠を超え、リスニング作品としても高く評価される重要作です。

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アーティストについて

Amon Tobin は、ブラジル・リオデジャネイロ出身のエレクトロニック・ミュージック・プロデューサーです。

90年代中盤にロンドンへ渡り、名門レーベル「Ninja Tune」と契約。既存のレコードから音を切り出すだけでなく、それを微細な粒子にまで分解し、全く異なる楽器の音色やリズムへと再構築する手法は、当時の音楽シーンに衝撃を与えました。

クラブシーンだけでなく映画音楽やサウンドデザインの分野にも影響を与えています。

アルバムの特徴・個性

1998年にリリースされた『Permutation』には、以下のような際立った個性があります。

  • サンプリングの極致
    100%サンプリングで構築されていると言われながら、その響きはまるで生身のジャズ・バンドが目の前で演奏しているかのような躍動感に満ちています。

  • 「Permutation(置換)」という名の魔法
    複雑に組み合わされたドラムのパターンが、曲の進行とともに有機的に変化(置換)していく様は、数学的な美しささえ感じさせます。

  • シネマティックな暗黒美
    フィルム・ノワールを彷彿とさせる、ミステリアスで少し不穏な空気がアルバム全体を覆っています。視覚を刺激する音像は、聴く者の脳内に架空の映画を映し出します。

『Permutation』全曲レビュー

1. Like Regular Chickens

  • ジャンル:アブストラクト・ドラムンベース

  • 特徴:映画のセリフを切り取ったようなサンプリングから始まる幕開け。不規則に打ち鳴らされるドラムと、不穏にうねるベースラインがリスナーを瞬時に引き込む。中盤からの畳み掛けるようなリズムの乱舞は、まさに「音の置換」を体現している。

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2. Bridge

  • ジャンル:ジャズ・フュージョン / ドラムンベース

  • 特徴:ウッドベースのウォーキングラインが印象的な、極めてジャジーなトラック。高速で刻まれるブレイクビーツと、優雅なサックスのサンプリングが衝突し、エネルギッシュな空間を作り出している。

3. Reanimator

  • ジャンル:ダーク・ジャングル

  • 特徴:重厚なブラスの響きと、破壊的なスネアの音が交錯する。タイトルの通り、死せる音を再起動(Reanimate)させたかのような生命力に溢れており、サンプリング技術の高さが如実に現れている。

4. Sordid

  • ジャンル:アート・ブレイクス

  • 特徴:ミステリアスな旋律と、執拗に繰り返されるリズム・エディットが特徴。音の粒立ちが非常に鋭く、スピーカーから放たれる一音一音が聴き手の肌を撫でるような感触を覚える。後半に向かって密度を増していく展開は圧巻。

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5. Nightlife

  • ジャンル:シネマティック・ラウンジ

  • 特徴:都会の夜の裏側を覗き見るような、妖艶で危険な香りが漂う。抑制されたビートと、空間を広く使った残響音が、深い孤独と高揚感を同時に描き出している。

6. Escape

  • ジャンル:エクスペリメンタル・ジャズ

  • 特徴:フリージャズのような即興性を、サンプリングという手法で再現しようとした野心作。目まぐるしく変化する拍子と音色に翻弄されながらも、そのカオスの中に存在する奇妙な秩序に魅了される。

7. Switch

  • ジャンル:ブレイクビーツ / アブストラクト

  • 特徴:乾いたドラムの打撃音が心地よく響くトラック。その名の通り、リズムや音色の「スイッチ」が頻繁に行われ、聴き手の予測を裏切り続ける。Amon Tobin 流の遊び心と、音響的な緊張感が絶妙なバランスで同居している。

8. People Like Freak

  • ジャンル:ラウンジ・ブレイクス

  • 特徴:60年代のスパイ映画を彷彿とさせるキャッチーなサンプリングが印象的。アルバムの中では比較的軽快なトーンだが、その裏で鳴り響くベースの深さは、やはりアモン・トビンならではの重厚さを保っている。

9. Sultan Drops

  • ジャンル:エスニック・ドラムンベース

  • 特徴:東洋的な旋律が織り込まれた、エキゾチックな雰囲気の一曲。異国情緒漂うメロディと、容赦なく刻まれるインダストリアルなビートのコントラストが、唯一無二のサイケデリアを生んでいる。

10. Fast Eddie

  • ジャンル:ハード・フュージョン

  • 特徴:目まぐるしいスピードで展開するベースラインとドラムの応酬。アグレッシブでありながら知的な構成は、聴き手の脳内アドレナリンを限界まで引き上げる。

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11. Toys

  • ジャンル:ダウンテンポ / エクスペリメンタル

  • 特徴:おもちゃ(Toys)のような金属的で繊細な音が、デジタルな迷宮の中を転がり落ちていくような感覚。静謐な中にも鋭いトゲが隠された、極めて独創的な音響工作が楽しめる。

12. Nova

  • ジャンル:ボサノヴァ・ブレイクス

  • 特徴:Amon Tobin のルーツであるブラジル音楽へのオマージュ。ボサノヴァ特有のコード感やアコースティックギターの音色を、細分化されたビートで再構築しており、壮大な旅の終わりにふさわしい美しさと切なさが同居している。

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こんな人におすすめ!

  • ジャズと電子音楽の高度な融合を聴きたい人

  • 作業用ではなく“集中して聴く音楽”を求めている人

  • 映画のような物語性のあるアルバムを求める人

  • 音響系・エレクトロニカに興味がある人

  • ドラムンベースを深く掘り下げたい人

同じ系統の楽曲・アルバム5選

  1. Squarepusher『Hard Normal Daddy』
    ジャズの超絶技巧ベースと高速ドリルンベースを融合させた傑作。Amon Tobin とは異なるアプローチだが、ジャズへの深い敬愛と過激な電子音の衝突という点で共通している。

  2. DJ Shadow『Endtroducing.....』
    100%サンプリングで構築された、ヒップホップ/インストゥルメンタルの金字塔。サンプリング美学の双璧と言える一枚。

  3. Photek『Modus Operandi』
    ドラムンベースに武道のようなストイシズムと、極限まで磨き抜かれたミニマリズムを持ち込んだ傑作。音の鋭さと、そこに宿る深い精神性において、本作と共鳴する。

  4. Flying Lotus『Cosmogramma』
    2010年代のロサンゼルスから届けられた、現代の『Permutation』とも呼べるカオス。フリージャズ、ヒップホップ、IDMを飲み込んだ情報量の凄まじさは、Amon Tobin の遺伝子を感じさせる。

  5. The Cinematic Orchestra『Motion』
    Ninja Tuneの同門。より生演奏に重きを置いているが、サンプリングを駆使して架空のサウンドトラックを構築する姿勢は、Amon Tobin が本作で見せたシネマティックな側面と通底している。

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まとめ

『Permutation』は、ドラムンベースというジャンルを再定義したとも言える重要作です。単なるリズムの快楽にとどまらず、音響芸術としての可能性を提示しています。

難解に感じる部分もありますが、その複雑さこそが本作の魅力です。繰り返し聴くことで新たな発見があり、長く付き合えるアルバムといえるでしょう。

音楽を深く楽しみたい方には、ぜひ一度体験してほしい一枚です。