出典:YouTube
1960年代、ジャズが洗練の極みに達し、ポップ・カルチャーが最も華やかだった時代。
その中心にいたのは、後にMichael Jackson をプロデュースし世界を席巻することになる巨匠、Quincy Jones(クインシー・ジョーンズ)でした。
今回ご紹介する1965年のアルバム『Quincy Plays for Pussycats』は、彼の膨大なキャリアの中でも格別にスタイリッシュで遊び心に溢れ、最高にクールな「大人のためのポップ・ジャズ」です。
ジャズの自由さとポップの親しみやすさを見事に両立させた本作は、ジャズ初心者からコアなファンまで幅広く楽しめるアルバムです。
- アーティストについて
- アルバムの特徴・個性
- 『Quincy Plays for Pussycats』全曲レビュー
- こんな人におすすめ!
- 同じ系統の楽曲・アルバム5選
- この記事で紹介したアルバム
- まとめ
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アーティストについて
Quincy Jones は、もはや説明不要の「音楽界の巨人」です。
トランペッターとしてキャリアをスタートさせ、瞬く間にアレンジャー、コンポーザーとしての才能を開花。Count Basie やFrank Sinatra の作品を手掛け、ジャズを大衆的な芸術へと押し上げました。
1960年代、彼はマーキュリー・レコードの副社長を務める傍ら、映画音楽の世界にも進出し、映画『質屋』や『夜の熱気の中で』などで革新的なスコアを残しました。
彼の音楽の特徴は、どんなに複雑なアンサンブルでも驚くほどキャッチーに、「黒い」グルーヴを感じさせる洗練されたアレンジにあります。
本作は、そんな彼が「ポップス」と「ジャズ」の境界を最も軽やかに、かつ確信犯的に踏越えた時期の傑作です。
アルバムの特徴・個性
1965年にリリースされた本作は、タイトルの通り(Pussycats=可愛い子ちゃん、あるいは当時の流行語としての女性たち)へのアピールを意識した、洒脱でスリリングな楽曲が並びます。
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最高峰のアレンジメント
当時の一流セッション・ミュージシャンを集め、Quincy Jones 流のビッグバンド・サウンドを「現代的(1960年代当時)」にアップデートしています。 -
ボサノヴァとロックの導入
伝統的なジャズ・スウィングだけでなく、当時流行していたボサノヴァや、初期のロックンロール的ビートを絶妙にミックスしています。 -
和楽器との融合
琴を取り入れるなど、飽くなき実験精神とエキゾチズムが垣間見えます。
『Quincy Plays for Pussycats』全曲レビュー
1. What’s New Pussycat?
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ジャンル:ポップ・オーケストラ
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特徴:Burt Bacharach 作曲の映画主題歌を、Quincy Jones 流のユーモアで再構築した幕開けの一曲。オリジナルのTom Jones 版とは一線を画す、管楽器によるトリッキーなフレーズと弾むようなリズムが印象的。彼の持つ「遊び心」が最も分かりやすく表現されたカラフルなナンバー。
2. The Gentle Rain
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ジャンル:ボサノヴァ / ジャズ
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特徴:Luiz Bonfá による美しい旋律を、繊細かつ流麗なアレンジで仕立て直している。優雅なストリングスとピアノが、タイトルの通り「優しい雨」のようにリスナーを包み込む。洗練された都会的なセンスが光る、極上のラウンジ・ミュージック。
3. Blues In The Night
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ジャンル:スウィング・ジャズ
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特徴:伝統的なジャズ・スタンダードを、よりアグレッシブに解釈。唸るようなベースラインと計算し尽くされたホーンの「間」が素晴らしい。古き良きジャズの精神を失わずに、1960年代のスピード感を注入した見事な仕上がり。
4. After Hours
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ジャンル:ブルース・ジャズ
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特徴:スロウなテンポで展開される、重厚なブルース・ナンバー。真夜中のジャズ・クラブを思わせる煙たさと色気が漂う。ピアノの一音一音が重く響き、Quincy Jones のアプローチが単なるポップさだけではない深いルーツに根ざしていることを示している。
5. Blues For Trumpet & Koto
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ジャンル:ジャズ・エキゾチカ / 和ジャズ
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特徴:本作の中でも一際異彩を放つ、トランペットと「琴」を融合させた実験的な一曲。オリエンタルな情緒と、黒いブルースの感覚が不思議な調和を見せる。グローバルな音楽的嗅覚と革新的なアレンジ能力が結晶化したトラック。
6. (I Can’t Get No) Satisfaction
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ジャンル:ビッグバンド・ロック
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特徴:The Rolling Stones の名曲を、まさかのブラス・アンサンブルでカバー。あの有名なギター・リフをホーン・セクションが奏でる様は痛快そのもの。ロックの初期衝動をジャズの高度な技術で肉体化させた、非常にスリリングなテイク。
7. A Walk In The Black Forest
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ジャンル:イージー・リスニング / ジャズ
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特徴:ドイツのピアニスト、Horst Jankowski のヒット曲。跳ねるようなスタッカートが特徴的なピアノ・メロディを、よりスウィング感の強いアレンジで仕立て直している。日曜日の午後のような軽やかで幸福な空気に満ちた一曲。
8. Non-Stop To Brazil
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ジャンル:ボサノヴァ / ジャズ
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特徴:当時アメリカを席巻していたボサノヴァへのQuincy Jones 流の回答。優雅なフルートの旋律と柔らかいパーカッションの響きが、リスナーを一瞬にしてリオの海岸へと連れ去る。クール・ジャズの知性とラテンの情熱が完璧な均衡を保っている。
9. The Hucklebuck
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ジャンル:R&B / ジャズ・ダンス
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特徴:ブルースから派生した初期のダンス・ナンバーを、迫力あるビッグバンド・サウンドで再現。強靭なバック・ビートが心地よく、当時のダンスホールでの熱狂を現代に伝える。シンプルながらも「踊れる」音楽としてのジャズの魅力を再認識させてくれる。
10. Mack The Knife
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ジャンル:スウィング・ジャズ
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特徴:スタンダード中のスタンダードを、疾走感溢れるテンポで料理。緻密に積み上げられたブラスの壁が圧倒的なエネルギーを放つ。Quincy Jones というアレンジャーの巨大さを、その完璧な構築美から感じ取れるトラック。
11. Sermonette
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ジャンル:ソウル・ジャズ / ゴスペル
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特徴:Cannonball Adderley のレパートリーとしても知られる、ゴスペル調のファンキーな楽曲。教会音楽の敬虔さと、ジャズの世俗的なグルーヴが交錯する。ホーンのコール&レスポンスが楽しく、聴く者をポジティブな気分にさせてくれる。
12. The “In”Crowd
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ジャンル:ソウル・ジャズ / モッド・ジャズ
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特徴:都会的な洗練を絵に描いたようなナンバー。軽快なハンドクラップとピアノのリフレイン、弾けるようなリズム。1960年代の「時代の寵児」たちが集う社交場の空気をそのまま封じ込めたような、華やかなフィナーレ。
こんな人におすすめ!
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1960年代のラウンジ・サウンドが好きな人
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ビッグバンド・ジャズの入門編を探している人
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ジャズとポップの橋渡しとなる作品を探している人
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おしゃれなBGMとしても楽しめる名盤を求める人
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和楽器とジャズの融合に興味がある人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
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Lalo Schifrin『The Dissection and Reconstruction of Music from the Past...』
『ミッション:インポッシブル』のLalo Schifrin による怪作。映画音楽的なドラマ性とジャズ、ロックを融合させたスリリングな展開が楽しめる。 -
Henry Mancini『The Pink Panther』
洗練されたポップ・ジャズの極致。ユーモアと気品、圧倒的にキャッチーなテーマ曲。Quincy Jones が本作で見せた「大人の遊び心」に通じる美学がある。 -
Burt Bacharach『Reach Out』
本作でカバーしているBurt Bacharach 自身の作品。オーケストレーションの妙と、唯一無二のメロディ。60年代ポップスの最高峰のサウンドメイキングを堪能できる。 -
Count Basie『Basie Meets Bond』
伝統的なビッグバンドの雄が映画『007』を料理した一枚。『Satisfaction』カバーのような、既存のポップスをジャズに昇華させる手腕の共通点が見出せる。 -
Jimmy Smith『The Cat』
Lalo Schifrin がアレンジを担当した、オルガン・ジャズの名盤。タイトルの「Cat」繋がりだけでなく、夜の都会を疾走するようなダイナミックなブラス・サウンドが共通している。
この記事で紹介したアルバム
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まとめ
『Quincy Plays for Pussycats』は、Quincy Jonesのアレンジャーとしての天才ぶりを存分に味わえる名盤です。
ジャズ、ポップ、ボサノヴァ、ラウンジを自在に行き来しながら、どこまでも洗練されたサウンドを聴かせてくれます。
1960年代の華やかさとQuincyの創造性が凝縮された一枚。ジャズ入門にも、往年のファンにも、自信を持っておすすめできる作品です。