出典:YouTube
Steph Pockets の『Flowers』は、ジャズ、ヒップホップ、ソウル、レゲエを自然体で融合した隠れた名盤です。
アルバムタイトル曲「Flowers」や「Summertime」などの人気曲を収録し、日本のアンダーグラウンド・ヒップホップファンやジャジーヒップホップ愛好家から長年支持され続けています。
本作は2005年発売のセカンドアルバムで、彼女の代表作として語られることも多い作品です。
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アーティストについて
Steph Pockets は、アメリカ・フィラデルフィア出身の女性ラッパー、シンガー、プロデューサーです。
9歳からラップを始め、ヒップホップだけでなくジャズ、ソウル、レゲエなど幅広い音楽性を持つアーティストとして活動してきました。
彼女の最大の強みは、ラップとシンギング(歌)を自在に行き来する唯一無二のスタイルと、徹底してポジティブでインスピレーショナルなメッセージ性です。アンダーグラウンド・ヒップホップにありがちな暴力的・攻撃的なトーンとは一切無縁で、愛、平和、希望、自身のルーツに対するリスペクトを、スモーキーでありながらも非常に温かみのある歌声で語りかけます。
日本で特に高い人気を獲得し、AI をはじめ多くの日本人アーティストへの楽曲提供やプロデュースも行っています。
アルバムの特徴・個性
『Flowers』というアルバムが持つ唯一無二の魅力、音楽好きを虜にし続ける理由は、主に以下の3つの要素に集約されます。
- アコースティック・ギターとピアノが紡ぐ「圧倒的なメロウネス」
本作の最大のアイデンティティは、サンプリングと生楽器が見事にブレンドされた耳馴染みの良いアコースティック・サウンドです。タフなドラムビートの上でアコースティック・ギターやピアノの旋律が鳴り響き、温もりを感じさせます。 - 「1人2役」の卓越したボーカル・ワーク
彼女は、卓越したライムを刻む本格派ラッパーであると同時に、ソウルフルでメロウなメロディを歌い上げるシンガーでもあります。タフなラップでサビへ向けてビルドアップし、そのまま自らの美声でエモーショナルなサビを歌い上げています。 - 時代を超えて心を癒やす「ポジティブ&ヒーリング」なメッセージ
ヒップホップが商業的に巨大化ていた2000年代半ば、本作が放つ「ピースフルな空気感」は極めて異彩を放っていました。リリックの端々から他者への愛、人生の美しさ、困難を乗り越えるためのポジティブなパワーが感じられます。
『Flowers』全曲レビュー
1. Summertime
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ジャンル:サマー・アンセム・ヒップホップ / メロウR&B
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特徴:夏の気怠さと爽快感を凝縮したような、極上のリラクシン・ビーツ。太く安定したドラムの上にきらめくようなフェンダー・ローズの和音と軽快なアコースティック・ギターのカッティングがレイヤーされる。
2. Flowers
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ジャンル:ジャジー・ヒップホップ / ネオ・ソウル
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特徴:人生における喜びや悲しみ、出会いと別れを「花々」に例えた文学的なリリックが、エモーショナルなストリングスの残響とともに深く胸に突き刺さるマスターピース。ラッパーとしてのシリアスな表情と、女性としての包容力に満ちたシンガーとしての表情を完璧に使い分けている。
3. Studio54
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ジャンル:ジャズ・ファンク・ヒップホップ / アップテンポ・ブレイクビーツ
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特徴:かつてニューヨークに存在した伝説のディスコ「Studio 54」の名を冠した、アルバム中最もダンサブルでファンキーなエッジを持つ楽曲。太くうねるようなベースラインと小気味よくミュートされたエレキギターのカッティング、華やかなホーンセクションのフレーズが生み出すグルーヴが素晴らしい。
4. Rock-Bottom
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ジャンル:アブストラクト・ジャズ・ラップ / ヒップホップ
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特徴:人間の内省的な部分や「どん底(Rock-Bottom)」からの這い上がりをテーマにした、シリアスで重厚なトラック。くぐもったピアノのワンショットループと哀愁に満ちたアコースティック・ギターの低音リフが緊張感を演出している。
5. Driving
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ジャンル:アーバン・クルージング・ヒップホップ / ネオ・フォーク・ソウル
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特徴:休日のドライブや夜の街を滑走するシチュエーションに完璧にフィットする、非常にスムースなナンバー。流れるように軽やかなピアノのアルペジオと優しく包み込むような低音のベース、抑えめに刻まれるハイハットが心地よい。
6. Lost In Translation
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ジャンル:ジャジー・ヒップホップ
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特徴:どこか異国の地に迷い込んだような、不思議なセンチメンタリズムと浮遊感を持ったトラック。エコーが深くかけられたアコースティック・ギターの音色が空間に漂い、言葉の壁やコミュニケーションの機微を描いた切ないリリックと見事にシンクロしている。
7. Ride
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ジャンル:メロウ・ヒップホップ / G-Funk
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特徴:レイドバックした心地よいグルーヴが全編を支配する、西海岸の夕暮れを想起させるようなトラック。太く滑らかなシンセベースラインと温かみのあるクラシックギターの爪弾きが、絶妙なコントラストを描く。
8. Grandma
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ジャンル:スピリチュアル・フォーク・ソウル / ゴスペル・ヒップホップ
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特徴:自身のルーツであり深い愛を注いでくれた祖母への感謝と敬意をストレートに歌い上げた、非常にエモーショナルで温かい楽曲。アコースティック・ギターの優しい弾き語りに聖歌のようなオルガンの音色、後半にかけて厚みを増していくゴスペル調のコーラスが重なる。
9. Get Wild
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ジャンル:オールドスクール・ジャズ・ラップ / ファンキー・ブレイクビーツ
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特徴:前曲までの温和な空気から一転し、野生的なビートが炸裂する非常にタフで攻撃的なナンバー。硬質に叩きつけられるスネアと激しくループするサックスのブロウがリスナーのテンションを極限まで引き上げる。
10. Party At My Place
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ジャンル:パーティー・ラップ / ブロックパーティー・ソウル
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特徴:生々しいハンドクラップと仲間たちの笑い声のようなサンプリングボイス、軽快に転がるエレピのバッキングがアットホームな空間を構築している。終始ポジティブな波動が満ちており、彼女の人柄の良さと音楽を愛する純粋な心がそのまま音になったような一曲。
11. Song Of Love
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ジャンル:オーガニック・ヒップホップ / オーガニックR&B
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特徴:世界への愛、人への愛をストレートに紡いだ、賛美歌のような普遍的な美しさを持つミディアム・ナンバー。流麗なストリングス・アレンジと夜空を想起させるピアノの単音が、包容力あふれる歌声を優しく支える。
12. Bum Bum Bum
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ジャンル:アコースティック・ポップ・ヒップホップ
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特徴:これぞSteph Pockets というアイデンティティが爆発した楽曲。爽快に刻まれるアコースティック・ギターのカッティングと跳ねるようなキック&スネアの絡み合いが、抜群の心地よさを生み出す。
13. Flowers Incognito Remix
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ジャンル:エレクトロ・ジャズ / アシッド・ジャズ
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特徴:先鋭的なクラブ仕様へと仕立て直した極上のリミックス・トラック。アシッド・ジャズのグルーヴと冷徹に洗練された4つ打ちのブレイクビーツ、都会的なシンセベースが、オリジナル曲の哀愁にモダンな夜の輝きを与えている。
こんな人におすすめ!
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作業用BGMにもじっくり鑑賞にも使えるアルバムが欲しい人
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ネオ・ソウルやオーガニック・ソウルが好きな人
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女性MC作品を探している人
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本格的なラップとソウルフルな歌の両方を堪能したい人
- 2000年代アンダーグラウンド・ヒップホップを掘りたい人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
- Lauryn Hill『The Miseducation of Lauryn Hill』
詳細:元The Fugees の歌姫が1998年に発表し、グラミー賞を総なめにしたヒップホップ/R&B/ソウル史における絶対的名盤。愛、母性、スピリチュアルな祈りを歌った普遍的なリリックの説得力も含め、一度は通過しなければならない世紀のマスターピース。 - Nujabes『Modal Soul』
詳細:聴く者の魂を浄化するような美しいスピリチュアリズムに満ちあふれた、時代を超越する名盤。哀愁を帯びた美しいピアノのループや、エモーショナルなサックスの旋律をヒップホップのブレイクビーツに高次元でサンプリング・融合させている。 - Substantial『To Definition』
Nujabes のプロデュースワークでも知られる敏腕ラッパーが2001年に発表した、クラシックなジャジー・ヒップホップの傑作。ジャズ・ピアノのサンプリングを中心に構築されたタイトで気品あふれるトラックの上を、彼のインテリジェンスを感じさせる流れるようなフロウが滑走する。 - Jill Scott『Who Is Jill Scott? Words and Sounds Vol. 1』
生演奏の極上ヒップホップ・ビーツとジャズ・ファンクのグルーヴの上で、詩の朗読からソウルフルなホイッスルボイスまでを自在に操る。同じフィラデルフィアの地が生んだ、ネオ・ソウル/ネオ・フィリー・シーンの絶対的な女王の衝撃的デビューアルバム。 - Speech『Spiritual People』
アコースティック・ギターやハンドクラップを全面に押し出した、土着的でピースフルなサウンドの上で、人生の美しさや家族への愛、自然への感謝をラップと歌で優しく語りかける。90年代にオーガニック・ヒップホップの道を切り開いたArrested Development のフロントマンが2000年に発表したソロ名盤。
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まとめ
『Flowers』は、2000年代ジャジーヒップホップの隠れた名盤として今なお高く評価されるべき作品です。派手なテクニックや流行を追うのではなく、人間らしさや温もりを大切にした音楽が詰まっています。
ジャズ、ソウル、レゲエ、ヒップホップが自然に溶け合ったサウンドは2020年代に聴いてもまったく古さを感じさせません。NujabesやIN YA MELLOW TONE周辺作品が好きな方であれば、きっと心に残る一枚になるでしょう。
忙しい日常の中で少し肩の力を抜きたいとき、『Flowers』は静かに寄り添ってくれるアルバムです。