出典:YouTube
2001年、Feederはサードアルバム『Echo Park』を発表しました。インディーズからキャリアを重ねてきた彼らのこの一枚は、UKチャート5位を記録し、彼らを一躍メインストリームへと押し上げました。キャッチーな楽曲と抒情性を兼ね備えたこの作品は、当時のロックシーンに新たな高みを示すものとなりました。
アーティストについて
Feederは1994年にWelsh・Newportで結成されたバンドで、Grant Nicholas(Vo/Gt)、Taka Hirose(Ba)、Jon Lee(Dr)を中心としたトリオです。初期はオルタナティヴロックにダークな感情を込めた重厚なサウンドを特徴としていましたが、徐々にポップかつメロディアスなスタイルへ進化。『Echo Park』以降は商業的にも成功し、日本を含む多くの国で人気を確立しました。
アルバムの特徴・個性
『Echo Park』は、シンセを取り入れたより商業的なアプローチと、ダークな感情が共存する作品です。Gil Norton との共同プロデュースにより、シンセやテープエフェクトを交えた実験的な音作りがなされており、バンドの演奏力がストーリーを牽引しています。聴く者を鼓舞するアンセムと、心に寄り添う歌詞が混在し、英国ロックの魅力が凝縮された一枚です。
『Echo Park』全曲レビュー
1. Standing on the Edge
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ジャンル:オルタナティヴ・ロック
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特徴:緊張感あるイントロはインダストリアル風ドラムと鋭利なギターリフで幕を開ける。途中で1960年代風のポップコーラスに移行し、ミスマッチを自然に融合している。Grant Nicholasの歌声は自己反省と焦燥を帯び、サビでは「世界の縁」に立つ主人公の覚悟が伝わってくる。本作のプロダクションを担当したGil Nortonとの緻密なバランス設計が際立つ。
2. Buck Rogers
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ジャンル:ポップ・ロック
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特徴:TR-808的なリズムとキャッチーなベースラインが特徴で、シングルヒットの理由は明白。歌詞は近未来的な逃避願望と、現実への揺らぎを巧妙に混ぜており、Grantが書いたものでオーディエンスに共感を与えるシンプルさが秀逸。プロディーサーやA&RによりSR‑71向けの曲を自分たちのものにした逸話も面白い。
3. Piece by Piece
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特徴:アンビエント調のイントロから静かに幕開けし、ゆらぎあるコード進行とメランコリックなメロディが展開。歌詞は「破片のように壊れた関係」を暗喩し、感情の繊細さと空虚さを巧みに描く。サイケ・トリップ混じりのサウンドデザインで、Feederの実験性が見えるイチ推しバラード。
4. Seven Days in the Sun
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ジャンル:サーフ・ロック風オルタナ
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特徴:軽快なサーフ風ギターとホーン的シンセが夏の爽やかさを感じさせる、明るく爽快なムードが全体を包むポップチューン。“七日間の太陽”をテーマに、歌詞はノスタルジーと移動の自由を表現。キャッチーなギターが耳に残り、青春のワンシーンのような光景を呼び起こす。表面的には陽気でも、根底に少しの孤独が見え隠れする。
5. We Can't Rewind
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ジャンル:エモーショナル・ロック
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特徴:クワイエット・ラウド構造を採用し、静かなAメロから激しいサビへとスイッチ。歌詞は別れた恋人への思いやりと希望を込めており、「友人としていよう」という慈しみも感じられる。バンドの内省的側面が表れており、暗を抱えつつ前を向く姿勢が示される。
6. Turn
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ジャンル:ポスト・ブリットポップ
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特徴:優しく穏やかな旋律が印象的で、メロウな質感がアルバムに安らぎをもたらす。サビでは思いがあふれるように展開し、抑制と解放のバランスが美しい。Tour中の孤独やメンバー間の絆を浮かべる歌詞が温かい。
7. Choke
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ジャンル:ヘヴィ・ロック/グランジ
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特徴:低音の効いたヘヴィなリフと、どこかダークなトーンが印象的。暴力性すら感じさせるサウンドで、感情の鬱屈をストレートにぶつけるような1曲。アルバム中でも特に重厚な“ポップ側”を象徴する中間曲。
8. Oxygen
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ジャンル:ミッドテンポ・オルタナ
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特徴:アンビエント的なイントロから壮大に展開し、後半は壮大なアンセム性を持つ構成。Grantの感情深いボーカルが「酸素のように必要な何か」への渇望を表現し、ポジティブと葛藤の狭間を行き来する。優しさの中に心の痛みが漂うような、抑制された美しさがある。リスナーを深く静かに包み込む1曲。
9. Tell All Your Friends
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ジャンル:ポップ・ロック
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特徴:キラキラしたギターとポジティブなメロディで、一見明るい曲調。しかし歌詞には“別れ”や“始まり”を示唆するフレーズがあり、青春の終わりのような余韻が残る。自己防衛とポーズの正当化に見える語り口が印象的だが、全体としては軽快なロックチューン。Grantの「責任の擦り付け」に対する苦笑交じりの表現が面白い。
10. Under the Weather
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ジャンル:ミニマル・ロック/アコースティック寄り
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特徴:シンプルな構成でボーカルの感情がダイレクトに伝わる。心の内を淡々と語るようなトーンが印象的。穏やかな空気の中にも孤独や疲れを感じさせる静かな名曲。
11. Satellite News
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ジャンル:ドリーミー・オルタナ
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特徴:ゆったりとしたペースで、ニュースを聞くように現実逃避と不満を交えた歌詞が胸を打つ。浮遊感が強く、宇宙や未来への郷愁すら感じる。最後の重く響くギターリフも印象的で、アルバム後半の落ち着きと深みを与える重要曲。
12. Bug
こんな人におすすめ!
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90年代後半〜2000年代初頭のUKロックが好きな人
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NirvanaやFoo Fightersのようなグランジ・エモ系が好きな人
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キャッチーで感情に訴えるメロディが好きな人
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激しさと優しさ、両方の要素をバランスよく味わいたい人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. Jimmy Eat World –『Bleed American』
アメリカ発のメロディック・エモの金字塔とされる名盤。キャッチーでラジオ向きな曲が並ぶが、そこに込められたメンタル面の傷や思索が深く、単なるポップロックに終わらない構成力が光る。英国的メロディアスさにアメリカン・ポップの清涼感を混ぜた好例といえる。
2. Idlewild –『The Remote Part』
英語圏文学の影響とギター・アンセムが同居する稀有な作品。激しさと繊細さを同時に持つタイプで、サウンド面はよりブリティッシュ・ロック然としている。ポエティックな歌詞と壮大なメロディライン、エモーショナルなヴォーカルという三拍子が揃ったアルバムだ。
3. Ash –『Free All Angels』
北アイルランド出身のAshは、90年代末〜2000年代初頭のUKギターロック復権を象徴するバンドの一つ。楽曲の粒が立ち、疾走感のあるギターと叙情的な歌詞の融合が魅力。ロックキッズに親しまれる一方で、深読みもできる構成になっている。
4. Manic Street Preachers –『Know Your Enemy』
Feederのエモーショナルさをより政治的/社会的な文脈に寄せたのが、マンネリを打破するこの問題作。バンドの転換点となる本作は、感情の爆発というよりは「知的で内燃的なロック」としての重厚さがあり、似たフィーリングを異なる角度で伝える。
5. Nada Surf –『Let Go』
アメリカのオルタナ〜エモシーンにおける秘宝的作品。アコースティック調でありながら構成は緻密で、余白の美学とメロディの純粋さを感じさせる一枚である。夜に一人で聴くのにぴったりな心象風景ロック。
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まとめ
『Echo Park』は、Feederがポップ&ロックの狭間を走り抜けた傑作と言える一枚です。感情の起伏を鮮やかに描き出すメロディ、実験と覚悟を感じさせるサウンド、全編に漂う「生きる熱」のようなもの。満足のいくロックアルバムを求める人にとって今なお色褪せない珠玉の作品です。