出典:YouTube
1990年代後半、日本のラウドロック/ハードコアシーンは大きな進化を遂げていました。その中で独自の存在感を放っていたのが、COCOBATです。
1999年にリリースされた『I versus I』は、彼らのキャリアの中でも特に異彩を放つ作品であり、ミクスチャー・ロック、ハードコア、ファンク、ヒップホップを横断するジャンルレスな一枚となっています。
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アーティストについて
COCOBAT(ココバット)は、1991年にベーシストのTAKE-SHIT(坂本猛)を中心に結成されたバンドです。
ハードコア・パンク、スラッシュ・メタル、ファンクの要素を独自のセンスでミクスチャーしたサウンドは、結成当初からシーンに衝撃を与えました。特に、リーダーであるTAKE-SHITによる、地鳴りのような超絶ベースプレイと、バキバキに歪んだスラップ奏法はバンドの代名詞となっています。
幾度かのメンバーチェンジを経ながらも、常に「重さ」と「速さ」の極致を追求し、Pushead によるアートワークと共に、国内外のラウドミュージック・ファンからカルト的な支持を集め続けている唯一無二の集団です。
アルバムの特徴・個性
1999年にトイズファクトリーからリリースされた『I versus I』は、それまでのミクスチャー路線を継承しつつも、よりヘヴィでストイックな質感を追求した作品です。
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「静」と「動」の対比
前作までに比べ、不穏な静寂(ダークなアルペジオ)と、そこから爆発する重厚なリフのコントラストがより強調されています。 -
TAKE-SHITのベース・モンスター化
本作でも、もはや打楽器と化したベースサウンドが全編を支配しています。ギターと対等、あるいはそれ以上に前面に出た低音の咆哮は圧巻です。 -
研ぎ澄まされたプロダクション
音の分離が非常に良く、各パートの「打撃音」がダイレクトに脳に響くような、タイトで冷徹なサウンドメイキングが特徴です。
『I versus I』全曲レビュー
1. I Vs I
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ジャンル: ヘヴィ・ミクスチャー / ハードコア
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特徴: イントロから全開のスラップ・ベースが空気を切り裂き、ヘヴィなリフへと雪崩れ込む展開は圧巻。自分自身との葛藤を叩きつけるようなヒリヒリとした緊張感が、アルバム全体のトーンを決定づけている。
2. Try Out
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ジャンル: スラッシュ・ハードコア
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特徴: 前曲の余韻を切り裂くように始まる、爆発的なスピード・ナンバー。タイトなドラミングとバキバキのベースラインが完全にシンクロし、リスナーを逃げ場のない音の濁流へと引きずり込む。短尺ながらも、中盤のモッシュパートでの重量感の切り替えが見事である。
3. Solitario
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ジャンル: ダーク・ミクスチャー
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特徴: 「孤独」を意味するタイトル通り、不穏な静寂を湛えたイントロから、一気に重厚なグルーヴへと転換する構成が光る。HIDEKIのボーカルが低く唸り、内面的な闇を抉り出すような表現力を見せている。スロウながらも力強いリズムが、心臓を直接叩くような衝撃を与える。
4. Hand Nuts
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ジャンル: ファンク・メタル
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特徴: TAKE-SHITのベースの独壇場とも言える、パーカッシブなスラップ奏法が炸裂する楽曲。メタル的な硬質感と、ファンク特有の身体性が高い次元で融合しており、COCOBATにしか出せない「跳ねる重低音」を存分に堪能できる。
5. Eye Surrender
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ジャンル: ニュースクール・ハードコア風
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特徴: 殺気立ったギターリフと、地を這うようなボーカルが印象的なトラック。溜めてから一気に放出するようなダイナミズムがあり、ライブでの爆発力が容易に想像できる。一切の無駄を削ぎ落としたストイックなアンサンブルが、聴く者の闘争心を煽る。
6. Deus
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ジャンル: ヘヴィ・ロック
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特徴: アルバム中盤の楔となる、儀式的で重厚なスロウ・ナンバー。反復されるベースラインが催眠的な効果を生み出し、リスナーを深いトランス状態へと誘う。重さの質が「破壊」から「圧殺」へと変化するような感覚を覚える一曲。
7. Ude
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ジャンル: インストゥルメンタル / ベース・ソロ
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特徴: 「腕」と名付けられた通り、TAKE-SHITの超絶技巧を凝縮したインスト・トラック。打楽器と化したベースから放たれる圧倒的な音圧と、緻密なフレーズ構築は、すべてのベーシストにとって驚愕の対象となるだろう。
8. Tunguska
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ジャンル: スラッシュ・メタル / ハードコア
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特徴: ツングーシュカ大爆発を想起させるような、圧倒的な破壊力を持った高速ナンバー。鋭利なギターリフが空間を切り刻み、怒涛の勢いで駆け抜ける。混沌としたエネルギーが制御された、バンドのタフな演奏力が際立っている。
9. Punho
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ジャンル: ミクスチャー / ハードコア
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特徴: 「拳」を意味するタイトル通り、力強いパンチのような衝撃を伴う楽曲。変則的なリズムアプローチを見せつつも、芯にあるのは極めて硬派なハードコア・スピリットであり、聴き手の胸にダイレクトに響く。
10. Cheated
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ジャンル: オールドスクール・ハードコア
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特徴: 初期の衝動を思い出させるような、シンプルかつストレートな激しさに満ちた曲。過剰な装飾を排し、純粋な「怒り」と「速度」を音にぶつけており、アルバム後半においても一切の失速を感じさせない。
11. Bobo
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ジャンル: ダーク・ハードコア
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特徴: 重苦しい空気を纏った、ミディアム・テンポのヘヴィ・ナンバー。HIDEKIのボーカルが狂気を帯びて響き、不穏な旋律とともにアルバムの終焉が近いことを予感させる。重厚なビートの底に沈み込むような感覚が心地よい。
12. Chova
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ジャンル: エクスペリメンタル / アウトロ
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特徴: アルバムの最後を締めくくる、独特の残響と重低音が交差するトラック。高まった緊張感がゆっくりと冷却されていくような、どこか寂寥感のあるエンディングを演出している。
こんな人におすすめ!
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日本のアンダーグラウンド音楽を掘りたい人人
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90年代ラウド・ロックに興味がある人
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ストイックでダークな世界観に浸りたい人
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スラップ・ベースの新たな可能性を探しているプレイヤー
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ミクスチャー・ロックが好きな人
同じ系統の楽曲・アルバム5選
1. GASTUNK『UNDER THE SUN』
COCOBATが多大な影響を受け、本作でもカバーしているレジェンド。ダークでゴシックな雰囲気と、ハードコアのスピード感が融合したサウンドは、COCOBATの精神的支柱とも言える。
2. S.O.B『GATE OF DOOM』
日本が世界に誇るグラインドコアの先駆者。洗練された破壊衝動と、一切の迷いがない高速ビートの応酬は、COCOBATのストイックな部分と強く共鳴する。
3. PRIMUS『Frizzle Fry』
ベースが主役のミクスチャーという点で、世界的な共通項を持つLes Claypool 率いるバンド。アプローチは異なるが、ベースを打楽器のように扱い、変態的なフレーズを構築する独創性は、TAKE-SHITのプレイスタイルと比較して聴くと非常に興味深い。
4. THE MAD CAPSULE MARKETS『OSC-DIS』
デジタルとラウドを融合させ、日本から世界へ発信した傑作。COCOBATが肉体的な重さを追求したのに対し、こちらはデジタルな重さを追求しているが、90年代後半の「日本の重音」の進化を語る上で、本作と並べて聴くべき一枚。
5. CASBAH『BOLD FAT MISSILE』
日本のスラッシュ・メタル・シーンの雄。地を這うようなリフと、力強いリズムセクションの融合は、COCOBATのメタル的な側面のルーツを感じさせる。硬派で揺るぎない、芯の通ったラウドミュージックの真髄を味わえる。
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まとめ
『I versus I』は、COCOBATの持つジャンルを越境する音楽性が最大限に発揮された作品です。
ハードコア、ファンク、ヒップホップ、ノイズといった要素が衝突しながらも、ひとつの作品として成立している点は非常にユニークです。
90年代ミクスチャーの文脈の中でも異彩を放つ存在であり、今聴いてもその実験性は色褪せません。ラウド・ロック好きはもちろん、音楽の枠を超えた作品を求めるリスナーにもぜひおすすめしたい一枚です。